1,原状回復工事は「入居者に対しての最低限のマナー」である
原状回復工事は新しい入居者を迎え入れるための準備でしかありません。つまり、新しい入居者に対しての最低限のマナーと言えます。このような考え方はひと昔前ではありませんでした。
その理由は、賃貸市場はひと昔前まで貸し手市場であったため、原状回復工事がされていない汚いお部屋でも、入居者の募集を行えば入居申し込みが入っていたからです。その為、入居確定後に原状回復工事を行っても問題はありませんでした。
しかし、人口減少に伴い空室率が右肩上がりである借り手市場の現在では、同じような条件の空室がたくさんあります。その結果、先ほどからお伝えしている原状回復工事を行わなければ、入居者に見向きもされなくなったのです。
これが現在の状況です。「原状回復工事は入居者に対しての最低限のマナーである」というのはこういうことです。
この記事ではお伝えしませんが、さらに入居者から選ばれるためには、バリューアップリフォーム工事やリノベーション工事で、より魅力的なお部屋作りをする必要があります。魅力的な部屋にすることで入居促進に繋げていくのです。
2,原状回復工事で修繕すべき項目と費用
原状回復工事を行うときは、入居希望者がお部屋を内覧する際に「清潔」と思ってもらえるかがポイントです。では、原状回復工事で修繕すべき項目を紹介していきます。
Ⅰ,クロス
【クロスに傷が付いている写真】
クロスとは、ご存知の通り壁一面に貼られたシートのことです。原状回復するものの代表例となる存在です。壁の穴や汚れが目立つときは、貼り替えを行いましょう。また、クロスを貼り替えることによって清潔感が増します。
クロスの貼り替える頻度は、単身タイプとファミリータイプで異なります。
単身タイプは入居期間が短い場合があり、クロスの汚れが少ない場合は、ハウスクリーニングのみで済む場合もあります。
ファミリータイプでは基本的に平均入居期間が長いため、クロスの張替えが必要になる場合が多いです。また、小さなお子様がいる場合やペットの飼育をしている場合は、壁の落書きや傷が付いていることもあるので、入居者過失として請求できる場合もあります。
クロスの単価は量産クロスであれば、1m当たり1,000円程度です。
1K(20㎡)のお部屋のクロスをすべて交換した場合、5万円程度の費用がかかります。
Ⅱ,床材
【床が傷ついている写真】
床材にはさまざまな種類があり、それぞれのお部屋のグレードにあわせて選択していく事が必要です。また、各床材で原状回復の頻度も変わってきます。
種類はフローリング・フロアタイル・クッションフロアの3つが主流です。費用はフローリングが一番高く、塩化ビニールで作られたフロアタイル、そしてクッションフロアの順となります。
通常賃貸マンションでは、一番値段が安いクッションフロアが使用されます。しかし、クッションフロアは凹みが目立ちやすく、一度入居すると貼り替えを必要となる可能性が高い素材です。
フロアタイルの場合は凹みが目立ちにくく、貼り替える頻度が少なくて済みます。導入時には費用が高くなりますが、毎回の貼り替えを必要としないので経済的と言えるでしょう。
また、見た目もクッションフロアより高級感があるので、内覧時に好印象を与えることが出来ます。
フローリングに関しては、ファミリーマンションと一部の単身マンション(もともとフローリングで施工された部屋)で使われます。高級な素材のため、賃貸マンションではあまり使われません。
賃貸マンションで多く使われているクッションフロアの単価は、1㎡当たり2,500~3,000円程度です。
1K(20㎡)のお部屋のクッションフロアをすべて交換した場合、5万円程度の費用がかかります。
Ⅲ,畳
【畳が汚れている写真】
畳は傷み具合によって対応が変わります。畳は日に焼けると緑色から黄色へ変色します。畳の土台となる畳床の劣化が少なければ表替えで処理します。表替えでは、低価格のもので1枚当たり5,000円程度です。
しかし、畳床が劣化していて、踏んで凹む様な感覚がある場合は、畳の新調を行います、新調では、1枚当たり12,000円程度となり、表替えより2倍以上の金額となります。
Ⅳ,設備
設備は、エアコン・コンロ・給湯器・換気扇等が原状回復の対象です。各設備を使用できない・不具合が起きている場合は修繕・交換を行います。
設備に関しては、入居時のトラブルに繋がりやすいため、原状回復時に必ず設備の状態を確認してください。
Ⅴ,ハウスクリーニング
ハウスクリーニングとは、クリーニング業者がお部屋全体を清掃することを指します。代表的なものとして、キッチン・お風呂・トイレ・換気扇の掃除と、床掃除(ワックスがけを含む)を行います。
入居者自身で退去時の清掃を行うのが基本ですが、入居者自身が清掃を怠ったり、素人では落としきれなかったりした汚れをプロが清掃します。
1K(20㎡)で20,000円程度、2LDK(50㎡)で35,000円程度が相場と言えるでしょう。
Ⅵ,消耗品
【水栓から水漏れが起こっている写真】
消耗品には電池・電球や水栓パッキン等が含まれます。原状回復時には、こちらの交換も必要です。
水栓パッキンの交換に関しては、リフォーム時に合わせて交換しておくことをおすすめします。入居後に交換すると、専門業者に出張費用や諸経費を支払うことになり、無駄な経費が掛かります。
また、水栓パッキンは、専門業者に依頼をしなくても自分自身で交換することも可能です。その方法も知っておくと便利です。消耗品を交換することは、クレーム対策にもなります。
入居すぐに電池・電球切れ、水漏れが起きるとクレームになってしまいます。賃貸借契約には「入居中の消耗品の交換は入居者負担」とする契約が多いため、例えば入居初日に電球が切れてしまった場合、交換費用は「入居者負担」になります。
「それであれば、オーナー負担で消耗品を交換しなくてもいいんじゃないの?」と思われる方も多いかと思います。
しかし、現実的に考えると1~3ヶ月以内であれば、入居者が心地よく暮らし始めるための準備と捉え、オーナー負担で交換するのが良いでしょう。
交換しておけば、入居者から消耗品に関してのクレームがあがってくる心配はありません。
3,原状回復工事についての理解して、効果的な施策を行おう!
今回は原状回復についての概要を説明させていただきました。
入居者への最低限のマナーであり、厳しい借り手市場を勝ち抜くためには欠かせないものであることがお分かりいただけたと思います。
どんなタイプの賃貸物件だとしても入居者が退去した際にはすぐに原状回復工事を行い、原状回復工事済みの状態のお部屋で募集をすることをおすすめします。
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