もくじ
不動産の査定サイトは売り主の手間を省いて妥当な査定価格を知ることができる便利なものです。
しかし、うまく使わないと思いがけない損をすることもあります。ここではそのサイトの仕組みと利用上のポイント、おすすめサイトを一挙公開します。
1.不動産の査定サイトはなぜ存在するのか
最近の不動産売却を考えた所有者の行動としては、インターネット上の「不動産査定サイト」でまず簡易な査定をしてから、実際の不動産会社に本格的な訪問査定を頼む、というパターンが非常に増えています。
それは、まず所有者からした場合、今はそのようなことは少ないでしょうが、不動産会社と対面で査定を頼むと不当に安く見積もられたり、それについて言いくるめられたり、という不信が根本にあるからでしょう。ですので、その前に「自分なりに」相場を知ったうえで不動産会社と対面したい、ということを考えているわけです。
しかしこのサイトは不動産会社にとってもメリットがあります。何よりそのサイトにアクセスしてくるのは、何らかの不動産を所有し、かつ緊急度は別にしてその売却を考えている、という「見込み者」に限定されるからです。ですから、そのサイトと提携しておけば、非常に簡易に見込み者を集め、効率的な営業活動ができるのです。
このように両者のメリットが一致しているので、不動産査定サイトというものができ、そして増え続け、利用され続けているわけです。
2.不動産一括査定サイトの仕組みとは
その査定サイトで1番多いスタイルは、不動産情報の1回の入力で複数の不動産会社から査定金額が届くというものです。これについて詳細をご紹介します。
一括査定サイトとはどういうものか?
不動産の査定方法には1つの決まった方法論がありますが、しかし最終的には需要と供給のバランスをどのように見込むかという人間の判断が入りますので、不動産会社によって査定金額はばらつきます。当然、その根拠も異なります。過去は、1軒1軒不動産会社を回って同じ説明してそれらの査定価格を取る、という方法でしたが、それを家に居ながらにして、かつ1回の入力で済ませることができる、というものが不動産の一括査定サイトです。
査定をとる費用は無料です。ではどこでこういうサイトは運用費用を稼いでいるかというと、登録している不動産会社からの掲載料です。上でも書いたように、こういうサイトは不動産会社にとって今や有料な見込み客集めの方法ですし、1社あたりの負担額はさほど高くありませんので、喜んで宣伝広告費用として支払います。
また運営会社にとっては、掲載料は月額の固定ではなく、査定依頼数に応じた成果報酬型ですから、査定依頼が多ければ多いほど売上が上がります。ですので、利用者獲得のために広告を出し、たくさんの査定をしてもらうことを目指しているのです。
つまり、不動産所有者、不動産会社、運営会社それぞれにメリットがあるのがこの一括査定サイトなのです。
一括査定の仕組み
この一括査定サイトの仕組みは非常にシンプルです。
①所有している不動産の情報を入力
基本的にはまず不動産の査定をするための必要な情報を入力します。住所、広さ、間取り、所有者の連絡先などです。連絡先は、電話番号かメールアドレスだけで済むサイトもあります。
②査定を依頼する不動産会社を選ぶ
活動エリア、査定件数、アピールポイントなどが書いてある不動産会社の一覧から自分が査定をしてもらいたい会社を選びます。このステップがなく、自動で近隣5社などを選ぶサイトもあります。
③不動産会社から基本はメール簡易査定が届く
不動産会社によってメールの文書で来る場合と、簡単ですが査定書の形でPDFが添付されている場合があります。
④査定する会社に依頼する
その中で訪問査定を依頼したい会社があれば、メールへの返信の形で連絡します。
3.不動産一括査定のメリットとデメリット
このような不動産の一括査定ですが、メリットが目立つ半面、デメリットもあります。
不動産一括査定サイトのメリットとは
①比較検討できる
まず査定価格が1度の手間で複数取れますので、それらを簡単に比較検討できます。
②相場が分かる
その結果、だいたいの共通した価格帯が見えてくると、相場観がつかめてきます。
③手間がかからない
入力は簡単な内容で、なおかつ1回だけですから手間はほとんどかかりません。
④地域・物件に対応した会社をかんたんに探せる
自動選択にしても自分で選択するにしても、所有する不動産を査定する上で、そのエリアの取引件数も豊富で情報を持っている不動産会社を選べます。
不動産一括査定サイトのデメリット
一方、デメリットもあります。
①希望する会社の査定が取れるとは限らない
査定が取れるのはそのサイトに登録している、つまり掲載されている会社のみです。それは以下の条件に合致していることにになります。
- 掲載料を支払える会社
- その地域で営業できる宅地建物取引業の免許を持っている会社
です。特に2番目については補足が必要でしょう。宅地建物取引業の免許には、国土交通大臣に許可を得たものと、都道府県知事に許可を得たものの2種類があります。大臣免許を取っている会社は複数の県にまたがって営業所を持つ認可を受けていますが、全国の不動産会社の2%しかありません。残りの知事免許を取っている会社はその都道府県にしか営業所を構えられません。
営業所がないエリアで営業活動をしてはいけないという法律はありませんが、実際にはその土地カンがなければ仕事ができないのが不動産業ですから、やはり営業所周辺の物件を扱うことになります。ですから、自分が信頼している不動産会社を選びたくても、その県の免許を持っていなければ、査定を依頼することは難しいのです。
②査定は高めに出でてくることが多い
不動産会社が売買を仲介して得る収入は、売却価格に数%をかけた成果報酬です。したがって、その会社を通じて売れなければ売上にはなりません。しかし、その前提としては所有者に、複数の候補の中から自社を選んでもらい、その不動産の訪問査定の依頼を受け、仲介契約を結んでもらわなければなりません。
そのために不動産会社はどうするかというと、査定価格を高めに出して来ます。実際は、査定価格がいくらであろうと、それは売り出し価格には影響しても、売れなければ価格を下げることになりますので、売却価格とは本質的には関係ありません。しかし不動産の所有者は、そのあたりはやはり初心者ですので、査定価格=売れる価格だと勘違いして、査定価格が高い会社に売却を依頼しがちなのです。
したがって、仕事を取るために不動産会社は、他の不動産会社よりも査定価格が高くなるように、実際に売れるよりも高めで出して来る場合が多いのです。
3.不動産査定サイトを利用するうえでのポイント
では不動産一括サイトを利用するうえでのポイントをご紹介ます。
まずは簡易査定、業者を絞って訪問査定
もしもとりあえず相場だけ知っておきたい、というのであればネット上で依頼してメールで返事が返ってくる簡易査定で十分です。そのうえで実際に売却するのであれば、そのうちの1社または数社を選んで訪問査定をしてもらいます。
簡易査定は前述のように手間がかかりませんから、見比べられる自分の事務処理能力を考えながらその中で最大限依頼するのがよいでしょう。平均は5社程度に依頼します。
訪問査定は、物件を担当者が実査し、その情報を踏まえて査定価格を出す方法で、簡易査定よりも当然精度が上がります。この段階でもまだ無料ですが、もしもその物件に居住者がいる場合などは、訪問スケジュールを依頼者の方で調整する必要があります。1社依頼なら1回で済みますが、複数の場合はそれだけ手間が増えます。簡易査定が5社であれば、最高値と再安値の会社を除いた3社程度にするのが普通です。
査定価格で売れることは少ない
また初心者は査定価格=売却価格と考えがちだと書きましたが、査定価格で売れることは期待しないほうがいいでしょう。
理由は先に書いたように、不動産会社の査定価格は仲介契約を取るために高めに出してくることが多いからということと、査定価格はあくまで、路線価、公示価格、近隣にある同レベル物件の売却実績などから算出する「仮説」の金額だからです。
不動産にはそのほかに、敷地面積、建物面積、道路との設置状況、築年数、日当たり、マンションであれば階数など金額に影響する多くの要素があります。したがって不動産には2つと同じものはなく、近隣の似たような物件が3000万円で売れたから自分の方でも3000万円で売れるとは限らないのです。最終的には需要と供給の関係で売却価格は決まりますから、買主がその物件の条件をどう判断するかです。したがって、査定価格=売却価格にはならないのです。
また最終的には「値引き」も発生します。これは、購入希望者が現れた中で起こる、あと50万円安くしてくれたら買う、などの交渉です。断ってももちろんかまいませんが、とにかく早く売りたいというような場合は、それに応じることになります。したがってその値引き分も査定価格から下がります。
高い査定というだけで仲介業者を選ばない
「一括査定で高く売れる会社を選ぶ」という文章をよく見ますが、先ほどから書いているように、査定価格は仕事を取るために高く出してくる傾向がありますので、高い査定価格の会社を選んでも、高く売れるとは限りません。「高く売れる」ためには、その不動産会社が、不動産広告をしっかり打っている、営業所が大きくて集客できている、営業マンが優秀、近隣エリアに強い、などの諸条件に合致している必要があります。
ですから、安易に査定価格だけで仲介業者を選ばずに、上で挙げたような条件も検討して選びましょう。
4.おすすめの不動産査定サイト5選
ネットで検索するとたくさんの一括査定サイトが出てきますが、ここではその中からおすすめを5つ挙げておきます。
HOME4U
提携会社 | 550社 |
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利用者数 | 500万人 |
おすすめポイント | NTTグループの運営なので、安心して使えます。2001年からの運用なので、実績も豊富です。ただし、提携している不動産会社はやや少なめです。 |
すまいValue
提携会社 | 6社 |
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利用者数 | 非公開 |
おすすめポイント | 超大手6社のみで運用しているという点では数少ないサイトです。特に国内の3大大手の「三井不動産」「住友不動産」「東急リバブル」が比較できるのはここだけです。ただし、地元密着の不動産会社は入っていませんから、それも含めたい場合は、ほかのサイトも併用する方法がよいでしょう。 |
リガイド
提携会社 | 550社 |
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利用者数 | 非公開 |
おすすめポイント | 一括査定は通常5社程度から査定が届きますが、これは最大10社を比較できるという点で唯一のサイトです。旧SBIグループが運営しているのでシステム的には使いやすいです。ただし、提携不動産会社が少なめです。 |
イエウール
提携会社 | 1400社 |
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利用者数 | 450万人 |
おすすめポイント | 2013年空の運用と歴史は浅いですが、利用者数は国内トップクラスです。また定型会社数もNo1です。 |
イエイ
提携会社 | 1000社 |
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利用者数 | 300万人 |
おすすめポイント | 独自のマッチングシステムで該当する物件を得意とする不動産会社の査定が取れます。勧誘に対してのお断り代行サービスなどを導入し、悪徳不動産会社の排除を徹底的に行っているのです安心です。 |
今回は以上となります。
不動産を売る以上はできるだけ高い価格で、と思うのは当然ですが、そのためには所有者も自分なりの判断基準や価値観をしっかり持っておく必要があります。
不動産一括査定サイトは今までの手間を省いてくれる、非常に便利なものですが、しかしそれはあくまで1つのツールであって、最終的には自分でしっかり考えて判断する必要がある、ということは理解しておきましょう。そうすれば満足できる売却が可能になるはずです。