1. 意外と多い。賃貸管理に必要な業務
賃貸経営で必要な業務は何があるのでしょうか。
「物件を購入した時」「入居の募集をした時」「賃貸契約が開始してから」「入居者が退去時」の5つの時系列に分けて確認しましょう。
①物件購入時
・物件探し
・価格交渉
・物件調査
・購入申し込み、手付金支払い
・売買契約、ローン手続き
・物件や鍵の引き渡し
・オーナーチェンジなどの場合、既存入居者の賃貸契約引き継ぎ
②入居募集時
・家賃、敷金、礼金、更新料等の設定(市場調査による)
・仲介会社の選定
・チラシ作成、ポータルサイトへの掲載などの入居者募集活動
・仲介会社との媒介契約業務
・入居審査業務
・賃貸契約、保証会社との契約などの事務処理
・入金確認、精算業務
・鍵交換と受け渡し
③賃貸開始後
・契約書、敷金、書面の保管管理
・キャッシュフロー管理、リスク管理
・問い合わせ、クレームの対応
・建物、設備の管理、清掃業務
・設備故障の対応
・電気設備やガス、防火等、各種法定点検の手配
・車庫証明や駐輪許可証などの発行
・家賃の入金管理
・滞納時の督促、法的処置
・更新の書類準備と手続き、更新料入金の確認
・家賃収入や経費等の帳簿付け、確定申告
④入居者の退去時
・退去受付と手続き
・退去立会い
・鍵の返却
・敷金の返還、精算、確認
・修繕、クリーニングの業者手配
・退去時のトラブル対応
場合によっては省略できる業務もあるかもしれませんが、これらを行うことで入居者への満足度が固められ、長期に入居をしてくれる可能性が高くなります。
2.自主管理のメリットとデメリット
自主管理の大きなメリットは、おおまかにいうと「コスト削減ができる」「賃貸経営の勉強ができる」といった2つでしょう。
また、デメリットは「時間と労力がかかる」「修理やクレーム対応のクオリティが、管理業者に比べて高くないためトラブルになる可能性が多い」ことがあげられます。
①自主管理のメリット
自主管理大家のメリットは何と言ってもコスト削減になることでしょう。
管理料が発生しないために理想のキャッシュフローに近づけることができます。
また、修繕を自分で行うため、余分な人件費が削減でき、材料費の支出だけ抑えられます。
入居者からのクレームや問い合わせを直接自分で受け、対応することになるので、入居者と直接かかわる機会があるために、コミュニケーションがとりやすくなります。
また、これら一連の過程で賃貸経営のノウハウを学ぶことができるのも自主管理で行うメリットとなります。
①自主管理のデメリット
自主管理では、家賃収入管理や督促業務などの事務的処理や入居者の問い合わせやクレーム対応、物件の維持修繕など、すべてのことは大家さんが窓口となります。
そのために時間がとられるうえ、専門的な知識も必要となります。
所有する物件が多くなると、これらのことは心理的負担にもつながります。
自主管理で順調に賃貸経営ができればよいですが、間違いがあると裁判になったりもします。
トラブルが絶えないのが現状で、国民生活センターによれば、原状回復や敷金の相談だけでも13178件もあったとされています(2017年)。
3.サラリーマンで不動産を所有するなら「委託管理」を
一般的に、大家さん自身の労力をコストと考え比較すると、外注の専門職に依頼するほうが結果的には安い場合が多いようです。
自分が賃貸経営をする際、管理を委託すべきか、自分で管理すべきかの選択を間違えると、キャッシュフローが狂ってしまうだけでなく、法律に触れるような問題が発生することもあります。
①どんな人が委託管理を選んだ方がよいか
委託管理を選んだ方がよい人は次のような人でしょう。
1.相続などで賃貸経営することになった
突然自宅を相続することになった人は、サラリーマンや自営業という本業が別にある方が多く、自己管理するのは難しくなります。
2.転勤が決まって所有している家を賃貸することになった
自宅から通えないから転勤するのであり、所有する家を自己管理するのは難しくなります。
3.将来の備えとして家賃収入を目的に始めた、または価格が上がると考え不動産を買った
これらの動機で不動産を購入した人は、サラリーマンや自営業という本業が別にある方が多く、自己管理するのは難しくなります。
また、キャッシュフローについて考慮しなくてはなりませんので、支出を極力一定にさせるためには、管理会社に委託した方が賢明と言えるでしょう。
これらのことから、自分で賃貸管理を行う時間の余裕がないサラリーマンは、とくに委託管理を選ぶことがベターでしょう。
時間や精神的余裕をお金で買うつもりで、無理をしないようにしましょう。
4.よい管理会社を探すポイントは?
では、管理会社を選ぶとき、どんな基準で選んだらよいのでしょうか。
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会に加入している会社だけでも1,500社以上もあります。
選択する際の視点として5つご紹介します。
①管理手数料が安いこと
「管理手数料」の相場は家賃の3~5%ですが、10%ほどの手数料を要求する会社も少なくありません。
安ければ良いということではありませんが、管理手数料の安さに対してサービス内容が豊富かどうかは、重要です。
②所有物件のエリアや入居付けに強いこと
高い入居率を維持できるかどうかは、管理会社選びで最も重要なポイントとなるでしょう。
物件があるエリアの情報をたくさん持っているか、入居募集の際に、たくさんのポータルサイトの掲載してもらえるか、仲介会社との情報共有がきっちりされているかなどをチェックしましょう。
③豊富な管理実績があるか
管理会社の信頼度を「管理実績」で確認することも大切です。
管理戸数は最低でも200戸以上はほしいところですが、管理戸数が多すぎると、管理がずさんになるので注意しましょう。
入居率が高いかどうかを合わせて確認するとよいでしょう。
95%以上の入居率を維持している管理会社がおすすめです。
④サービスが充実しているか
「1. 意外と多い。賃貸管理に必要な業務」で紹介した賃貸管理の業務はほとんどの管理会社が行っていることです。
加えて独自のサービスを行っているか確認しましょう。
「24時間対応のコールセンターがある」「入居募集時の広告料が安い」など、ほかにはないサービスを行っていればプラスになります。
⑤コンサルティング業務がきちんとなされているか
賃貸経営を行っていくと、疑問点や不安に思うことを相談したいと思う時があるでしょう。
そんな時に適切なアドバイスや今後の経営方針について提案してくれる管理会社は候補に入れるべきです。
相談して盲点だったところや自分に不足している点が分かることは投資にプラスの影響を与えてくれます。
コンサルティングでなくても、自分の賃貸経営について、日々相談に乗ってくれる、カウンセリングの充実した会社はおすすめできます。
5.まとめ
これらのことから、不動産投資家マインドを持っている人は、多くの不動産を今後所有することを考えたら、管理会社への管理委託を選択するのが賢明といえます。
投資物件のコスト削減を目的に、自主管理をはじめたものの、苦労している人は少なくないからです。
また、いざ管理会社を選ぼうとするときは「楽をしたいから」「大手だから」「不動産をそこで購入したから何となく」といった理由で選ぶのではなく、自分にメリットがあるかないかを判断基準にし、管理会社を見極めるべきです。
第一に考えるべきは「賃貸経営を成功に導けるかどうか」ということだということを忘れないようにしましょう。