1.日本の空室の現状は?
2015年半ばくらいから立地的に人気が高いはずの東京23区内、神奈川県内でのアパート(木造、軽量鉄骨造)空室率がじりじりと上昇しています。
不動産評価Webサイト「TAS-MAP」( http://www.tas-japan.com/ )を運営する株式会社タス(所在地:東京都中央区、代表取締役社長:尾暮 敏範)は、
「賃貸住宅市場レポート 首都圏版・関西圏・中京圏・福岡県版 2018年5月」で「現況は昨年より好転するも賃貸市場の将来見通しは悲観的」と発表しています。
各地域の調査結果は賃貸住宅指標(空室率TVI(タス空室インデックス)、募集期間、更新確率、中途解約確率、賃料指数) で示しています。
TVI(タス空室インデックス)の定義は
https://corporate.tas-japan.com/service/analystas/vacancy/
を参考にしてください。
①首都圏
[東京都]
<全域>
空室率TVI(ポイント):13.48
募集期間(ヶ月) :2.79
更新確率(%) :37.02
中途解約確率(%) :44.43
賃料指数 :102.07
<23区>
空室率TVI(ポイント):13.08
募集期間(ヶ月) :2.78
更新確率(%) :37.37
中途解約確率(%) :44.40
賃料指数 :103.11
<市部>
空室率TVI(ポイント):17.21
募集期間(ヶ月) :2.97
更新確率(%) :36.14
中途解約確率(%) :44.94
賃料指数 :97.64
[神奈川県]
空室率TVI(ポイント):16.20
募集期間(ヶ月) :3.89
更新確率(%) :37.67
中途解約確率(%) :44.81
賃料指数 :99.33
[埼玉県]
空室率TVI(ポイント):17.08
募集期間(ヶ月) :3.21
更新確率(%) :41.03
中途解約確率(%) :41.59
賃料指数 :100.14
[千葉県]
空室率TVI(ポイント):16.32
募集期間(ヶ月) :3.47
更新確率(%) :40.91
中途解約確率(%) :44.91
賃料指数 :100.74
2004年1Q=100
分析:株式会社タス
②関西圏
[大阪府]
空室率TVI(ポイント):8.66
募集期間(ヶ月) :5.33
更新確率(%) :27.26
中途解約確率(%) :56.64
賃料指数 :103.21
[京都府]
空室率TVI(ポイント):13.82
募集期間(ヶ月) :5.61
更新確率(%) :32.94
中途解約確率(%) :51.05
賃料指数 :104.48
[兵庫県]
空室率TVI(ポイント):13.22
募集期間(ヶ月) :6.07
更新確率(%) :39.38
中途解約確率(%) :46.41
賃料指数 :104.63
[愛知県]
空室率TVI(ポイント):16.01
募集期間(ヶ月) :6.97
更新確率(%) :42.96
中途解約確率(%) :43.45
賃料指数 :101.74
[静岡県]
空室率TVI(ポイント):24.61
募集期間(ヶ月) :7.75
更新確率(%) :39.41
中途解約確率(%) :46.57
賃料指数 :97.16
[福岡県]
空室率TVI(ポイント):10.87
募集期間(ヶ月) :5.65
更新確率(%) :37.66
中途解約確率(%) :47.09
賃料指数 :107.36
これらの結果を分析すると、アパート系空室率は全地域で前月比は改善したものの、「かぼちゃの馬車事件」「レオパレス問題」などの影響で、融資態度の硬化により供給量が減少傾向となったことが影響していると考えられます。
東京市部のマンション系空室率の悪化は継続していますが、市場が二極化していることが伺えます。
マンション系空室率は関西圏と福岡県で横ばい、中京圏で改善しました。
2.満室になる物件と空室になる物件の差は?
アパートが空室になる理由は、ニーズのない場所に、ニーズに合わない建物を供給しているからです。
①相続物件はニーズを考慮していない
ニーズに合わない立地にアパートが建てられる理由は相続です。
RC造のマンションの場合は建設費が高いため、念入りに市場調査して建設されるため、人口増加地域の駅から10分未満の場所への供給が中心となります。
しかし、相続税対策のアパートは「土地ありき」のため、需要のない、駅から遠くの場所に建てられます。
そのため、人口減少地域で駅から10分以上の立地のニーズがない物件は、大量に供給され続け、余ってしまうのです。
②管理会社とハウスメーカー
大家さんがうまく連携していない土地所有者やハウスメーカーと、消費者のニーズを知る管理会社の連携がうまくいっていない場合も空室を招くことになります。
近年、アパート建設は複数のハウスメーカーが競い合っているため、一刻も早く、できるだけ利回りの高い試算を出さなければ受注につながります。
ハウスメーカーは家賃の査定を管理会社に依頼しますが、そのスピードはものすごい速さです。
短期間での査定は、正確さを失うこともあります。
多くの大家さんは利回りを重視しがちなため、家賃は高めにしますが、建設費は抑えるケースが多く、相場より高いのに、個性のない賃貸住宅となります。
収納のない単身物件やファミリー向けなのにガスコンロが小さかったりする物件は、結局、空室を招きます。
3.大家さんができる空室対策
立地の悪さを克服し満室にするには、物件にプラスの個性を持たせることが大切です。
駅やバス停から徒歩約30分のところに、相場より1万円ほど高い賃料で、満室になる事例もある。
①立地の悪さを活かし、住宅のソフト面を充実させる
雑木林や湧水などの自然に豊かな場所に立地し、共用部分にウッドデッキやバーベキュー施設などを設けたら募集開始から1カ月ほどで満室になったケースがあります。
畑を共同作業で行う、入居者間が集まってバーベキューを行い、交流が生まれるため、人との触れ合いや癒しを求める人に注目されたケースです。
②コミュニティ重視の賃貸物件にする
国土交通省が住生活基本計画の見直しで、取り上げた「コミュニティ賃貸」も空室を埋めるツールです。
最寄りの駅(無人駅)から徒歩約10分の立地ですが、賃料は相場より数千~1万円ほどは高く、入居時に町会参加を求められるなど、一見ハードルが高いように見える入居条件があるにもかかわらず、満室となっています。
これは、広く周知させるのではなく、自分が求める入居者層にのみPRした結果です。
4.まとめ
もし、親が立地の悪いところにアパートを建設すると言い出したら、満室経営を目指すために、ビジネスパートナーを探すことをおすすめします。
立地的に人気が高いはずの東京23区内、神奈川県内でも木造または軽量鉄骨アパートの空室率上昇しつつあります。
調査機関も賃貸住宅の動向を悲観的に見ています。
「行政が空き家対策の補助金を出したから」「今は低金利だから、今のうちに融資を受けなければ」「相続対策を早くやらなければ」と焦るのは禁物です。
やみくもにアパートを建てたら経営破たんしてしまうので注意が必要です。
テーマをもってアパートを建設するために、プロにコンサルティングしてもらうべきです。