賃貸物件の管理を管理会社に任せているものの対応が悪い。こちらから連絡しなければ何も反応がなく、このまま安心して任せられる気がしない。
ただ一度契約した管理会社は解約できるのだろうか。そのように悩まれていればどうぞこの記事をお読みください。
1.管理会社の解約は契約期間中でも可能
管理会社との契約では、期間は2年、その後は自動更新というような形にしているところが多いです。そのため、管理会社への対応に不満などがあっても、2年の契約期間が終わるまで解約を待たなければならないと思われているオーナー様もいらっしゃいます。
ですが、実際は契約期間中であっても管理会社との契約を解除することは可能です。今の管理会社へ管理を委託するときに交わした契約書には、契約期間とは別に、解約に関する内容も記載されているはずです。
その内容に従って手続きをすることで解約できます。また、契約書によっては契約期間についても、契約期間中の解約についても何も書かれていない場合もあるかもしれません。
その場合でも解約できるのでご安心ください。もし解約に関する内容がなければ、原則として「いつでも」管理会社との契約を解除できます。民法第651条の第1項で、"委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。"と書かれているからです。契約書に解約に関することが書かれていなければ、この条文に従います。
ただ、"当事者の一方が相手方に不利な時期に委任の解除をしたときは、その当事者の一方は、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。"と書かれていることから、管理会社が賠償請求をしてくるかもしれません。
ですが、「契約期間途中で解除したエレベーター保守管理契約に関して、マンション管理組合の損害賠償責任が否定された事例」(http://www.retio.or.jp/attach/archive/59-074.pdf)があるように、管理委託契約の途中解約は、「報酬の損失」以外の不利益があるとは考えられず、その損失分について賠償する義務はないので安心してください。
それでも本当に問題ないのか心配ということであれば弁護士に相談してみてください。
2.管理会社を解約する形は理由によって3つに分かれる
実際に管理会社との契約を解除するとき、その方法は3つに分かれます。
2-1.合意解除
合意解除というのは、管理会社とオーナー様双方の意思表示によって契約を解除するものです。つまりお互いに「契約を解除しよう」と同じタイミングで思った、という状況になります。
ただ管理会社を解約するときに、合意解除となることはほとんどなく、一般的には次に説明する「約定解除」となります。
2-2.約定解除
「約定解除」とは、契約に基づいて一方的な意思表示で契約解除を行うものです。合意解除と異なるのは、双方の同意が必要ないということです。
国土交通省が作成した「賃貸住宅標準管理委託契約書」
(http://www.mlit.go.jp/common/001228954.pdf) では第20条に"甲又は乙は、その相手方に対して、少なくとも 3 か月前に文書により解約の申入れを行うことにより、この契約を終了させることができます"
管理会社との契約がこの標準管理委託契約書に則ったものであれば、3ヶ月以上前に解約の申し入れを行うことで、たとえ管理会社が「認めない」と言っても解約できます。
2-3.法定解除
たとえば、管理会社から賃料の入金がない、というような賃貸住宅管理業においてあってはならない行為をしたときには、一方的な意思表示によって「法定解除」が行えます。
「賃貸住宅標準管理委託契約書」では、第19条に法定解除について書かれていますが、法定解除には、「契約に定める義務の履行を相当の期間を定めて催促する」必要があるため、法定解除が行使されることはほとんどありません。
そのため基本的には管理会社を解約するときには「約定解除」となります。
3.自主管理にするなら管理会社へ解約通知書を送るだけ
「約定解除」であれば、契約書に「文書により解約の申入れを行うこと」と定められていることがほとんどです。
解約の申入れでは次の3点を記載します。
・契約書の第何条に基づいての契約解除なのか
・いつをもって契約解除するのか
この3点を盛り込んだ解約通知書のサンプルは下記です。
謹啓 時下ますますご盛栄のこととお慶び申し上げます。
貴社と締結している賃貸住宅管理委託に関して、下記の通り通知いたします。
◯年◯月◯日に締結された賃貸住宅管理委託契約は、管理委託契約書第◯条の規定に基づき、◯年◯月◯日を以って契約終了とさせていただくことを、本書面について通知致します。
謹白
管理会社を解約して自主管理にするのであれば、解約通知書を送るのみで規定の期日を以って契約は終了します。
もし管理会社を解約して別の管理会社に委託契約を変更する場合は、別途引き継ぎの手続きも必要になります。
管理会社を変更する場合の手続きの流れや注意点は下記の記事で詳しく解説していますので合わせてお読みください。
管理会社をトラブルなく変更するための6つの手順と4つの注意点
もくじ1.管理会社変更までの6STEP2.管理会社を変更するときの注意点3.管理会社の変更はトラブルを回避して実施しよう1.管理会社変更までの6STEP投資用マンションの管理会社を変更する手順は大きく
4.管理会社解約後は入居者への通知を忘れずに
管理会社を解約という慣れない手続きをすると、それだけで非常に疲れてしまうと思いますが、入居者への通知も忘れずに行いましょう。
特に家賃の入金管理・督促を管理会社に委託していた場合、振込先も管理会社となっているはずです。契約を解除しても入居者に周知できていなければ、今までどおり管理会社に支払ってしまう可能性があります。
管理会社の解約は契約期間中でも可能【解約の方法も解説】そうすると改めて管理会社に事情を説明して、入金し直してもらうなど手間と時間がかかり、入金サイクルが乱れてしまいます。ローンの支払いにも影響してしまうでしょう。
ただポストに案内を入れただけでは、詐欺の可能性も疑われて管理会社にそのまま入金されてしまうこともあります。マンションの掲示板に掲示したり、可能であれば直接訪問したりして説明することがおすすめです。