「空室率」と一言でいっても、時点空室率・稼働空室率・賃料空室率の大きく3つの種類があります。また、空室率TVIという指標も存在し、賃貸経営でどの数値を参考にすればいいか混乱するかもしれません。
そこでこの記事では各空室率について説明したあと、賃貸経営で参考にすべき空室率についても紹介しましたのでぜひご一読ください。
1.全国の賃貸経営空室率
LIFULL HOME'Sは株式会社LIFULLが運営する不動産情報サイトです。そのサイトには全国の賃貸用住宅の空室率一覧がまとめられていますので紹介します。
わかりやすいように空室率が高い順で並び替えました。投資している不動産の地域の空室率を他の地域と比較するときにもご活用ください。
福井県 30.1
山梨県 28.2
長野県 27.7
茨城県 27.5
青森県 26.1
岐阜県 25.6
群馬県 25.0
奈良県 24.7
秋田県 24.5
和歌山県 24.5
香川県 24.5
栃木県 24.4
富山県 24.0
石川県 23.6
岩手県 23.3
鳥取県 22.9
福島県 22.8
高知県 22.8
徳島県 22.4
山形県 22.0
宮城県 21.5
新潟県 21.5
三重県 21.3
愛媛県 21.2
北海道 20.8
千葉県 20.5
大阪府 20.1
兵庫県 19.9
山口県 19.1
福岡県 18.9
島根県 18.7
岡山県 18.6
静岡県 18.5
埼玉県 18.4
長崎県 18.4
広島県 18.2
大分県 18.1
熊本県 17.9
滋賀県 17.7
鹿児島県 17.6
京都府 17.5
神奈川県 16.1
愛知県 16.1
宮崎県 15.8
佐賀県 15.7
東京都 14.5
沖縄県 11.7
参考) http://toushi.homes.co.jp/owner/
東京の空室率が低いのは予想通りかと思いますが、沖縄の方が東京都よりも空室率が低いというのは意外な結果だったかもしれません。実は沖縄県の県民性として、持ち家ではなく、賃貸住宅に住む傾向が強いというのがあります。
そのような理由から、沖縄県での賃貸住宅の空室率は低くなっています。
また各都道府県の詳細な地域での空室率状況については、下記サイトから地域を絞って確認してみてください。県としては空室率が高かったとしても、1地域においては空室率が低くとどまっているところも見つかるはずです。
見える!賃貸経営 | LIFULL HOME'S 不動産投資
賃貸経営やマンション・アパート経営でリスクを負う不動産オーナー(大家さん、地主、家主)や家を貸したい方向けの地域別の市場分析と不動産マーケット情報。
2.3つの空室率の考え方と計算方法
全国の賃貸住宅における空室率を紹介しました。ただ実は、空室率には3種類あるので、様々な資料を見たり、不動産会社と話したりするときにも、「空室率」は、どの空室率について言っているのかを確認することが大切です。
3種類の空室率というのは、
・稼働空室率
・賃料空室率
です。
それぞれ詳しく解説します。
2-1.時点空室率
先ほど紹介したLIFULL HOME'Sの空室率一覧も、この時点空室率が元になっています。
時点空室率というのは、空室率を算出するその「瞬間」における空室率のことです。たとえば、ある地域で空室率を調べるために100戸の物件を調べたら、5戸空室だった。だからこの地域の空室率は「5%」となります。
3種類の空室率の中でも計算方法がシンプルで、管理会社使用する「空室率」や統計で使われる「空室率」も何も説明がなければ時点空室率だと思ってください。時点空室率を使っている場合はよく、「2018年3月31日時点での空室率です。」という但し書きされていることが多いです。
時点空室率では一時的に退去が重なっているときなどに計算されると実態よりも空室率が高くなってしまうので、様々な時点での空室率を把握するようにすることが大切です。
2-2.稼働空室率
稼働空室率は、1年間の稼働日数のうちの空室日数の割合で考えます。
計算式は下記です。
たとえば、部屋数10のマンションを所有していて、2部屋でそれぞれ100日間の空室が1年間であった場合で考えてみましょう。
このとき、稼働空室率は、 【(2 × 100) / (10 × 365 ) ×100】で5.48%となります。
もしこれが、ちょうど2部屋が空室のときに時点空室率を出していると、空室率20%となり、稼働空室率とは全く異なってきます。ですが、賃貸経営においてどちらがより現実的な空室率かと言えば、稼働空室率の方でしょう。
そのため、賃貸経営を考えるときも時点空室率より、稼働空室率で計算することをおすすめします。
2-3.賃料空室率
日数ではなく賃料に着目して空室率を計算したものです。
計算式は下記のようになります。
たとえば、10部屋あるマンションに投資していて、その家賃が毎月10万円だったとします。そのとき、1年間満室経営できれば、賃料は1,200万円です。しかし、実際は1,000万円しか家賃収入がなかったとします。空室による家賃収入損失分は200万円と計算できます。
したがって、この場合の賃料空室率は 【200 / 1200 × 100】で16.6%です。
賃料空室率は、利回りに直結する部分です。部屋によって家賃が異なるような物件であれば、家賃が高い部屋のみで空室が続くと、全体の空室率は低くなりますが、平均して考えられる家賃収入よりも実際の家賃収入が少なくなってしまいます。
このような値は、時点空室率・稼働空室率では表れない部分なので、特に不動産投資の事業計画、費用対効果を計算するときに有効です。
3.賃貸経営で参考にするには注意が必要な「空室率TVI」
空室率TVIは株式会社タスが発表している独自の計算方法による空室率データです。TAS空室インデックスとも言います。この数値は日本銀行が半年に1回発表している金融システムレポートでも参考にされるような指標です。
株式会社タスのレポート内での空室率TVIの説明では、
"民間住宅情報会社に公開された情報を空室のサンプリング、募集建物の総戸数をストックのサンプリングとして、【空室のサンプリング / ストックサンプリング】で算出を行います。"
と書かれています。
資料
ただ、空室率TVIの注意点は、満室が増えるほど空室率が増加してしまうということです。
たとえば、全部で10室のマンションが10棟あり、そのうち5棟は満室だったとします。そして、残りの5棟が部屋ずつで10部屋空室だったとします。
このとき、時点空室率を計算すると
で10% となります。
一方、空室率TVIを計算すると
で20%となり、同じ空室状況であったとしても2倍も高く空室率が計算されてしまいます。
空室率TVIでは、募集物件の全部屋数が分母となってしまうため、満室のマンションが多いほど、分母は小さくなり、その結果として空室率が高くなるのです。
空室率TVIが重要な指標であることは変わりません。しかし、計算の仕方によって、このような感覚とそぐわない空室率の変化を算出することにもなるので、参考にするには注意すべき指標と言えます。
4.賃貸経営では稼働空室率を参考にする
ここまで合計4つの空室率について解説しました。
その中でも特に賃貸経営で参考にすべき空室率は「稼働空室率」です。1年を通してどれくらいの空室率なのかを把握することで、適切な資金計画を立てられます。
そして、一時的に退去が続いたとしても、稼働空室率を理解しておけば、急いで対策が必要な状況なのか、慌てる必要がない状況なのかを冷静に判断できるでしょう。
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