不動産に関する税金は様々あって複雑です。購入時、贈与・相続時、売却時それぞれのシーンごとに必要な税金と税額の計算方法について紹介しました。
税金の中には特例が設けられているものもあるので、知っていれば節税にもつながります。これから不動産取引の予定がある方は必見です。
1.不動産に関する税制
不動産に関する税金はさまざまあります。すべてを単独に理解しようとするとまとまりがつかず、実際にあなたが不動産を取得したり売却したりといった取引をするときに役立ちにくいです。
そこでこの記事では、不動産に関する税金について、取得・保有・売却のように取引を軸として分類してそれぞれ紹介します。
2.不動産の取得に関わる税金
まずは不動産の取得に関わる税金です。取得の場合、購入・新築、贈与、相続とさらに細かく分類されます。
2-1.不動産の購入・新築により取得したときに関わる税金
不動産取得税
土地や家屋を新築、増築、改築、売買、交換、贈与など取得した経緯は様々でも、なんらかの形で取得した場合にかかる税金です。
不動産の取得というのは、厳密には不動産の所有権の取得を意味するので、登記の有無・有償無償・取得の理由は関係ありません。そのため土地や家の所有権移転登記を省略した場合や建築した家を登記しない場合でも課税対象となります。
不動産取得税は、取得後6ヶ月~1年半程度で各都道府県から届く「納税通知書」を使用して金融機関で納付します。納税期間は各都道府県によって異なるので、納税通知書が届いたら確認するようにしましょう。
不動産取得税の税額は下記のとおり。
ただし、特例などによって税率が軽減される場合もあります。
たとえば宅地の課税標準の特例です。
平成30年3月31日までは宅地の課税標準額が半分になります。
そのほか、家を新築で購入した場合も税額が軽減されます。
課税床面積が50平方メートル以上240平方メートル以下の建物の不動産取得税は(固定資産税評価額 - 1,200万円)×3%となります。さらに平成30年3月31日までに長期優良住宅の普及の促進に関する法律に規定する認定長期優良住宅を新築あるいは、新築未使用のものを購入した場合、(固定資産税評価額 - 1,300万円)×3%となります。
登録免許税
土地や建物を建築したり、購入したりしたときに所有権保存登記や移転登記などをします。この登記をするときにかかる税金が登録免許税です。
税額は 課税標準(固定資産税評価額)×税率で決まります。不動産の購入・新築の場合は各種の軽減税率が適用されて、土地の所有権移転登記の登録免許税率は2%から1.5%に引き下げられています。
また床面積が50平方メートル以上の平成32年3月31日までに新築された住宅を取得した場合、所有権保存登記の税率が0.4%から0.15%に引き下げられ、認定長期優良住宅はさらに、0.1%にまでなります。
印紙税
不動産の売買契約書やローンで購入するときの住宅ローン契約書を交わすときに、契約書にかかる税金です。印紙税額は契約書に記載された契約金額によって決まります。
印紙税の納税方法は原則、収入印紙を契約書に貼り付けて印鑑を押します。
また不動産売買契約書にかかる印紙税は、租税特別措置法によって税率が引き下げられています。対象は不動産の譲渡に関する契約書のほかに、土地・建物の売買の最初に作成される契約書、売買金額の変更などのときに作成される変更契約書や補充契約書も含まれます。
条件は記載金額が10万円を超えるもので、平成26年4月1日から平成30年3月31日までの間に作成されるものです。
下表が軽減措置をとられた税率です。参考として軽減前のものも載せていますが、かなりの額が減税されているのがわかります。
契約金額 | 軽減税率 | 本来の税率 |
---|---|---|
10万円超50万円以下 | 200円 | 400円 |
50万円超100万円以下 | 500円 | 1,000円 |
100万円超500万円以下 | 1,000円 | 2,000円 |
500万円超1000万円以下 | 5,000円 | 10,000円 |
1000万円超5000万円以下 | 10,000円 | 20,000円 |
5000万円超1億円以下 | 30,000円 | 60,000円 |
1億円超5億円以下 | 60,000円 | 100,000円 |
5億円超10億円以下 | 160,000円 | 200,000円 |
10億円超50億円以下 | 320,000円 | 400,000円 |
50億円超 | 480,000円 | 600,000円 |
消費税
不動産会社から住宅を購入したり、住宅を新築したりしたときには消費税がかかります
土地は非課税ですが、建物は課税対象となっており、平成26年4月1日以降取引される建物は原則8%の消費税です。建物だけでなく、不動産購入で支払う仲介手数料も課税対象となっています。
今、政府は消費税を平成31年10月1日以降に10%に引き上げる予定ですが、平成31年3月31日までに売買契約を行った場合、平成31年10月1日以降の引き渡しでも引き上げ前(8%)の消費税率が適用されます。
2-2.不動産を贈与により取得したときに関わる税金
不動産取得税
不動産を贈与されたときにも、購入したときと同じように不動産取得税がかかります。ただし、取得した土地の価格が10万円未満の場合や、家屋の価格が12万円未満の場合、不動産取得税は課されません。
贈与により不動産を取得したときの不動産取得税は、住宅に対して3%、土地に対して特例を適用して1.5%となっています。
登録免許税
不動産を贈与された場合、名義変更となる所有権移転登記をする必要があります。そのときに登録免許税がかかり、贈与を原因とする所有権移転登記の税率は不動産の固定資産税評価額の2%です。
贈与税
財産を贈与により取得すると、贈与税も課されます。不動産購入資金を贈与された場合だけでなく、土地や建物など不動産をそのまま贈与された場合も同様です。
贈与税は毎年1月1日から12月31日までの1年間の贈与された財産の合計額に対して課税されます。翌年の2月1日から3月15日までに申告して納税することとなっています。
そのため、不動産だけではなくその年の全てを合算して贈与税の対象となり、贈与税の計算も合計金額から行われます。
贈与税の課税方式は暦年課税と相続時精算課税の2つです。相続時精算課税は贈与してくれた人が親や祖父母であるなどいくつかの条件が満たされれば選択することができます。
暦年課税の場合は毎年、贈与があったときに支払う制度で、相続時精算課税は2,500万円までの贈与では贈与税を支払わず、相続時にまとめて計算する制度です。
相続時精算課税は一度選ぶと、その対象となった人から受けた贈与はすべて相続時精算課税となるので節税を検討している場合はどちらが得になるか慎重に考えて選ぶようにしましょう。
また、配偶者への贈与については条件を満たせば2,000万円まで控除される特例があります。
贈与税は贈与する相手が家族であれば特例が適用されて、節税することができるので、事前に調べることがおすすめです。
2-3.不動産を相続により取得したときに関わる税金
登録免許税
不動産を相続により取得したときも、名義変更をする相続登記の手続きが必要です。そのときに登録免許税がかかりますが、不動産の購入や新築、贈与により取得した場合と比べるとごくわずかです。
相続登記の登録免許税の税率は0.4%となっているので、登録免許税は固定資産税評価額の0.4%です。
仮に5,000万円の不動産であれば20万円ということになります。贈与されたときにかかる税額の3分の1です。
また不動産の購入や贈与による取得とは異なり、相続により不動産を取得した場合は、不動産取得税は課税対象外です。
相続税
不動産を相続により取得した場合には、相続税の課税対象となります。相続税も贈与税と同様に、不動産だけに単独で課せられるものではありません。相続財産すべてに対して、相続税の計算がされます。
相続税には基礎控除として(3,000万円+相続人の数×600万円)が定められています。この基礎控除額を超えた範囲が、相続税の対象となります。
そのため法定相続人が3人だった場合、相続財産が4,800万円を超えなければ相続税は課税されません。また配偶者や未成年者に相続する場合は、それぞれ特例が定められているので単純に計算するよりも少なくなることが一般的です。
3.不動産の保有に関わる税金
不動産は所有しているだけで固定資産税・都市計画税という税金がかかります。毎年1月1日時点での所有者が納税義務者となります。
納税額については市区町村がそれぞれ計算し、納税義務者に納税額が通知されて納付します。課税標準となるものは固定資産税評価額が適用されていて、固定資産税評価額は3年に1度見直されることになっています。
原則的な税額の計算は下記のとおりです。
都市計画税 = 固定資産税評価額 × 最高0.3%
ただし、住宅用地や新築の建物に対しては固定資産税の特例が設けられています。
200平方メートル以下の小規模住宅用地では、6分の1に、200平方メートルを超える部分の一般住宅用地は3分の1になります。
また新築の場合は120平方メートルまでの部分については、3階以上の耐火構造・準耐火構造住宅ならば5年間、それ以外の住宅でも3年間は固定資産税が2分の1となります。この特例が適用されるのは、現在のところ、平成30年3月31日までに新築されたものに限られます。
都市計画税も毎年1月1日時点で都市計画区域内にある不動産を所有している人に課せられる税金です。市区町村が課税し、固定資産税と一括して納税することとなっています。
税率は最高0.3%となっていてその範囲内で、所有している不動産の大きさなどにより変動します。また都市計画税も住宅用の場合は軽減の特例が設けられています。
200平方メートル以下の小規模住宅用地は3分の1、200平方メートルを超える部分は3分の2となり、特例の適用は申請をしなくても市区町村が手続きしてくれます。
4.不動産の賃貸に関わる税金
4-1.固定資産税
不動産を居住用ではなく、収益物件として賃貸に出している場合もその不動産の所有者となっているので固定資産税が毎年発生します。
固定資産税は通常通り、固定資産税評価額×1.4%です。
4-2.所得税
不動産を賃貸していれば家賃収入が入るようになります。家賃収入は所得税の課税対象となり、給与所得などの他の所得と合算して課税されます。
家賃収入+給与所得の総合課税となるため、予想より所得税が上がることが多いです。また家賃収入の他に、不動産を賃貸運営する上で必要な経費がかかります。この経費については収入金額から差し引くことができます。
不動産の保有に関わる固定資産税・都市計画税も収入から差し引ける必要経費として認められています。また土地の購入金額や物件購入のための仲介手数料、建築費などは取得価額に含めて毎年の減価償却により必要経費とします。
取得年に一括で経費とすることはできないので注意が必要です。
4-3.住民税
前年の所得から決まる住民税もかかります。住民税は給与から源泉徴収される特別徴収と自分で納付する普通徴収の2つの方法、どちらかで納付します。
普通徴収の場合は一括での納付もできますが、年4回にわけて納税することもできます。
5.不動産の売却に関わる税金
5-1.譲渡所得税
不動産を売却したときには税金が課せられます。それが譲渡所得税です。譲渡所得税は現金には適用されず、土地や建物などの不動産、株式のような資産を譲渡した時に課せられる税金です。
事業所得や給与所得などの所得とは分離して計算されることになっています。譲渡所得は、土地や建物を売った金額から土地を買ったときの購入代金、購入手数料、その後に支出した改良費や設備費などを合計した取得費と、不動産を売るために支払った仲介手数料や測量費、売買家役所の印紙代、取り壊し費用などを合計した譲渡費用を差し引いて計算します。
また所有期間が5年を超えるものを譲渡した場合は長期譲渡所得、5年以下の場合は短期譲渡所得といって税金の計算が区別されます。
長期譲渡所得の場合は、所得税が15%、住民税が5%です。短期譲渡所得の場合は、所得税が30%、住民税が9%になります。
また不動産売却では、譲渡所得を計算したときに損失が出る場合もあります。損失が出た場合、他の土地や建物を売却したときの譲渡所得から控除することはできますが、事業所得や給与所得など他の所得から控除する損益通算はできません。
ただ例外もあって、長期譲渡所得かつ居住用財産を譲渡して譲渡損失が出た場合、一定の要件を満たす場合のみ、損益通算でき、それでも控除しきれない損失の金額については、翌年以後3年間にわたって繰り返し控除することができるように定められています。
これが適用される要件は複雑なので、詳しくは税理士や近くの税務署に相談へ行くことをおすすめします。
5-2.印紙税
不動産を売却するときには売買契約書を取り交わします。契約書に記載されている金額に定められた印紙税分の収入印紙を貼って納付します。
6.まとめ
不動産に関わる税金をシーンごとに分類してお伝えしました。不動産は取得したり売却したりするときだけでなく、所有しているだけでも税金がかかります。
さまざまな税制が不動産には関わってくるので、複雑ですが漏れがないように納税するようにしましょう。また税金の中には特例が定められていたり、贈与や相続の場合は現金で行うよりも節税につながったりするので、専門家に相談することもおすすめです。