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不動産投資

海外不動産による節税ってどうやるの?【気になる今後の動向も解説】

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1.海外不動産投資の節税の仕組み

海外不動産による節税ってどうやるの?と今後の動向は?

富裕層のコラムなどに節税対策の一つとして海外不動産投資が話題にあがっています。
では、なぜ海外の不動産に投資すると節税になるのでしょう?

答えは、耐用年数が長く、長期の減価償却が可能であるからです。

①海外不動産は日本でも課税される

日本に住んでいる人は国内と国外で生じるすべての所得に対して、日本で課税されます。
日本の居住者で、海外不動産投資をしている人は海外で納税していたとしても、海外納税分も含めて日本でも確定申告する必要があります。
確定申告で、海外投資不動産の不動産所得、不動産の売却益などの国外所得も毎年の所得に含めて計算しなくてはなりません。

国内では、個人が普通に日本国内の物件を購入、運営して損失が出ると、給与所得などの他の所得と合算できます。
不動産所得の損失を他の所得と損益通算すると、全体の所得が減少するため、課税額が少なくなります。
これを損益通算といいます。
日本人の場合、国外で発生した所得にも税金がかりますので、海外不動産に投資して損失が出た場合も損益通算は可能です。

②税金の計算のしかたと節税効果

たとえば、築30年経った木造建物(1000万円)は法定耐用年数を過ぎているため、耐用年数4年で計算します。
1年当たりの減価償却費は1000万円÷4年=250万円となります。
家賃が年間100万円、経費なしなら、250万円-100万円=150万円/年の損失が発生します。

もし、この物件を購入した人が所得税・住民税合わせて最高税率55%なら、150万円×0.55=82万5000円の節税効果があります。
減価償却費は4年間続くので、節税の合計は4年で82万5,000円×4年=330万円の節税になります。
5年目以降は減価償却がなくなり、節税効果がなくなります。

海外の不動産は実際の耐用年数が長く、5年経ったとしてもそれほど価格も落ちないと考えられます。
建物の価値が日本に比べ落ちにくいので、5年後に購入金額と同じ1,000万円で売却できたら、帳簿上の簿価は保有中に減価償却費を計上した結果0円です。
そのため、1,000万円の売却益となります。

個人が不動産を5年超保有して売却益が発生した場合は長期譲渡所得となるので、譲渡所得税の税率は売却益の20%、つまり1,000万円×0.2=200万円。
損失分の150万円と通算すると200万円-330万円=-130万円。130万円の節税ができることになります。

この計算方法だと、耐用年数が長いほど節税ができることになります。
つまり、耐用年数が長い海外不動産のほうが、日本の不動産よりも節税効果があるのです。

2.各国の不動産と税制

海外不動産による節税ってどうやるの?と今後の動向は?

海外不動産投資で成功するための条件は、

・不動産投資の利回りが高く、賃貸収入から利益が出せる
・日本の法定耐用年数を超えていても利用価値がある
・日本の法定耐用年数を超えていても、売却時に投資額を回収できる

などがあります。
このことから耐用年数が長い物件を選ぶことは投資成功への近道となるのです。

①アメリカの不動産

アメリカでは、築50年を超えた木造物件もきちんと売買されています。
制度が整備され、中古市場が活発だからです。
築年数よりも利用価値を高く評価しますので、築年数が経ってもメンテナンスがされている物件については建物価値をきちんと評価するため、資産に占める建物の比率が高くなります。
また、売却時に値段がそれほど落ちません。

②イギリスの不動産

イギリスの一般的な住宅は、石やレンガやブロックでできています。
その分耐用年数も長く、築年数が200年、300年を超える物件も珍しくありません。
日本で申告する際、石やレンガ、ブロック造の住宅の法定耐用年数は、38年。
7年で償却をすることができます。
イギリスのレンガ造りの不動産のほとんどの物件はこの耐用年数を超えています。
その場合は、古い物件であっても建物価格がさほど落ちず、短期間で多くの減価償却費を計上できます。

国土交通省の統計によると、不動産の平均耐用年数に関して、日本は約32年に対して、アメリカは約66年、イギリスは約80年となっています。

3.税制規制が行われる!?海外不動産投資の注意点

海外不動産による節税ってどうやるの?と今後の動向は?

日本では土地=資産価値と考えられます、海外では建物=資産価値と考えられ、日本と真逆に考えられています。
これは、減価償却を取る上で理想的といえます。
建物割合の高い物件を入手し、これを建物の価値が下落しないにもかかわらず4年程度で償却し、6年後程度を目処に売却する。
日本で償却を取るために苦労する点がほとんどクリアできるのです。
このスキームはずっと使うことができるのでしょうか。

①近い将来海外不動産で節税できなくなる!?

1.会計検査院の警告

会計検査院がこの節税方法に目をつけ、平成28年11月に以下のような意見を述べました(平成27年度会計検査院決算検査報告)

「本院は、証拠書類として提出を受けている所得税の確定申告書等の中に、国外に所在する建物を取得して不動産事業の用に供し、多額の減価償却費を計上して、不動産所得に損失が生じている納税者が見受けられたことから、国外に所在する建物に係る減価償却費の算定方法は建物の現状に適合しているかなどに着眼して検査した。」
「国外に所在する中古等建物について、賃貸料収入を上回る減価償却費を計上している納税者が多く見受けられる状況となっていた。また、簡便法により耐用年数を算定する場合に用いられる100分の20という割合は、昭和26年に定められて以降現在に至るまで変わっていない。これらのことを踏まえると、国外に所在する中古等建物については、簡便法により算定された耐用年数が建物の実際の使用期間に適合していないおそれがあると認められる。そして、賃貸料収入を上回る減価償却費を計上することにより、不動産所得の金額が減少して損失が生ずることになり、損益通算を行って所得税額が減少することになる。
したがって、本院の検査によって明らかになった状況を踏まえて、今後、財務省において、国外に所在する中古の建物に係る減価償却費の在り方について、様々な視点から有効性及び公平性を高めるよう検討を行っていくことが肝要である。」

これは、海外不動産を保有し節税が行われているが、それは、日本の税制の不備によって実現しているということを指摘しています。

会計検査院から指摘が入った場合、 近々に税制改正につながる可能性が大きく、そうなると、このスキームは使えなくなってしまいます。

最近では、SPCを利用した建物建設時の消費税還付・節税スキームが会計検査院の
指摘をきっかけに封じられました。特別目的会社を意味するSPCは「「特別目的会社」のことで、ペーパーカンパニーのようなもの。
資産を移し替えるための貯蔵庫のようなものであり、利益を追求することはありません。指摘により、多くの大家さんが消費税還付できなくなり、当時は泣いた大家さんも多かったようです。

2.税制改正で海外不動産が売れなくなるリスクが

会計検査院の指摘が、日本の税制の不備をついたものだったため、税制改正が行われる可能性があります。
海外に有する不動産で生じた赤字を、日本の所得と相殺できないようにする、海外不動産の法定耐用年数を長くする、などの措置が取られる可能性が出てきます。

4.まとめ

海外不動産による節税ってどうやるの?と今後の動向は?

節税目的の物件は、減価償却後の出口が非常に重要となってきます。
この出口戦略が税制改正により阻止されてしまうと、次に不動産を買う人が減価償却の旨味がなくなるために、売却価格が下落する可能性があり、投資としては、リスキーです。

今後の動向に注意しながら投資を行うべきです。

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賃貸”住まい”の新しいカタチを提供するEdge編集部が記事を書きました。

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