海外不動産投資には、利回りや節税の面で、国内不動産投資とは違った魅力があります。
しかし、国内の場合には存在しないリスクがあります。
ここでは、海外不動産投資の際に注意しなければならないリスクについて述べていきます。
1.為替レートの変動リスク
海外の物件に不動産投資をする場合、物件についてはかなり念入りに調査をするでしょう。
物件価格と家賃収入、もしくは値上がりする可能性が高い物件に投資を行います。
しかし、日本の不動産と異なり、海外不動産には為替レートのリスクを背負うリスクがあります。
①売却すると損をするリスクあり
たとえば、100万ドルの物件に投資をする際の為替レートが、1ドル120円なら1億2,000万円が必要となります。
その後、物件価格が110万ドルに値上がりし、売却をしようと考えたときに、為替レートが1ドル100円になっていればどうでしょうか。
110万ドルを1ドル100円で交換すると、1億1,000万円の手取りとなります。
つまり、1,000万円損してしまうことになるのです。
現地の不動産価格が上昇したとしても、不動産取得後に、円高になってしまえば、利益が出ない場合があります。
ここが海外不動産投資の怖いところです。
為替レートが将来どうなるか、先が読めないために、このことがリスクとなるのです。
②新興国のレートは変動が大きい
とくに、新興国に不動産投資を行う場合は、注意が必要です。
その国の中央銀行の考え方次第で為替レートが大きく動くためです。
その証拠に、新興国の通貨が暴落したり、通貨危機に陥ったりすることが過去に何度もありました。
1997年には、アジア通貨危機が起こっています。
アジア諸国の貨幣価値が下落するのではないかとの投資家たちの不安と、ヘッジファンドの空売りにより、アジア諸国の通貨が一気に下落してしまったのです。
当時のタイやインドネシアは、ドルとバーツをほぼ固定する「ドルペッグ制」をとっていました。
アメリカがドル高政策を打ち出したことで、ドルペッグ制を導入していたアジア諸国の輸出は伸び悩みました。
その国の貨幣価値が上がるとその国で作られている商品が相対的に割高になるためです。
経常収支は赤字になり、投資家たちの不安を誘いました。
ヘッジファンドに火がついてしまったのです。
投資家たちにより、アジア諸国の通貨は大量に空売りされるようになりました。
空売りは値下がりすれば儲かり、値上がりすると損をする手法です。
当時のアジア諸国の通貨は大幅な上昇が見込める状況ではなく、ヘッジファンドから格好の標的となってしまったのです。
海外投資家の資金の引き上げには外貨が必要ですが、外貨が底をついた国はドルペッグ制の維持を断念。
結果、大幅な貨幣価値の下落を招きました。
為替によるリスクは、外貨を扱う投資家にとって、もっとも大きいリスクといえます。
しかし、逆を返せば、大きな利益が生まれるチャンスであるとも言えます。
為替リスクをできるだけ小さくするためには、日頃からレートや経済の動きを観察することが必要です。
2.現地情報が入ってこない
海外の不動産投資は、現地の情報がすべて入ってこないため、リスクがあります。
インターネットを使って調べても、本当に知りたい現地の情報が全て入ってくるわけではないからです。
①現地の情勢を予想できない
日本の物件に不動産投資を行う場合は、投資を行う周辺の地域がどのように発展をしていくのか、新たな雇用は生まれるのか、人口の流入はどのような流れになるのかなど、多くのデータが存在しますし、予想もしやすくなります。
簡単に現地に行くこともでき、日本人の「ものさし」で判断するために、予想違いであることは、海外不動産に比べ非常に少ないのです。
出口戦略の予想もつけやすく、家賃収入も安定して見込むことができるかの判断はつきやすいのです。
②慣習が理解できない
海外不動産を購入する際は、まず、不動産会社や現地のデベロッパーから情報を入手します。
しかし、大企業が設立されるので、雇用が生まれる、人口が多くなるという予想はあっても、実際にどの程度雇用なのか、企業に将来性があるのかは、風土が違うために、細かい部分でまでは不鮮明です。
つまり、現地の情報の正確性に欠けるのです。
日本とは慣習や人間性も異なり、建築予定の建物が、建築中にストップしてしまうことも少なくなりません。
マクロ的視点から考えて、投資を行う国に将来性があることが分かっても、細部は未知数の部分が多いため、海外不動産の投資にはリスクを背負うようになります。
物件を購入後は、管理会社に管理を任せることになりますが、この場合も情報が正確に伝わってこないことがあります。
海外の管理会社は、業務の範囲や、丁寧さが日本と異なります。
情報に関しても詳細に伝えてくれないケースが多いために、迅速な対応が難しいことがあります。
3.現地の管理会社や投資会社を選ぶリスク
海外不動産投資を行う際に、不動産投資会社や、現地の管理会社を選ぶことは非常に重要です。
しかし、どこの会社が信用のできるかが分からないことが多く、この事がリスクとなります。
①どこの管理会社が良いか分からない
有名な会社でも実際に評判がいいかは、分からないことが多くなります。
知人が多くないために実際の評判は分からないことがほとんどです。
とくに新興国の場合は日本で知名度のない会社と取引することになるでしょう。
管理をしっかり行っていないと、物件の価値が下がる可能性は高くなり、入居付けが難しくなるというリスクが発生します。
管理会社がどのように建物の整備をしているのか見えない部分が多く、頻繁に現地へ出向いて物件の確認をすることができないので、管理会社にクレームを入れたり、変更したりすることも難しくなります。
②商慣習や考え方が異なる
また、日本人の感覚と海外の人との感覚がずれていることが原因で、管理がうまくいかない場合があります。
現地の管理会社は、定休日や勤務時間外はどんなに緊急を要するトラブルでも、対応してくれません。
日本だと入居付け、物件管理、督促業務など、幅広い業務を1社で行ってくれる管理会社が多数で、契約外のことも、「ついでに」と良心からやってくれる場合がありますが、海外の管理会社はドライです。
契約内容以外のことは一切やってくれません。
担当者が休んでいる場合、担当以外の人は代わりにその人の業務を行ってくれませんので、業務がストップします。
建物整備も日本人の目から見ると「雑」なケースが多いです。
手数料はしっかり徴収しますが、こちらが求める管理を行っていないと感じるでしょう。
現地の管理会社の経営状況も把握しにくく、知らない間に倒産していた、という話も耳にしますので、注意が必要です。
③日系の管理会社を選ぶ時の注意点
日系企業や日本の管理会社で、海外の不動産管理を手掛けている会社に依頼すると対策もあります。
しかし、サービスの品質や信頼面では、日本人スタッフに任せる方が安心できるいっぽう、客付け力が弱い、現地の情報が地元管理会社より入ってこないというマイナス面もあります。
4.まとめ
海外諸国は、言葉も商慣習も違うため、トラブルの発生も多くなるのは当たり前のことです。
そのために、為替リスクや現地の情報や業者にまつわるリスクが発生するのです。
これらのリスクを十分に理解し、投資を行うことが必要となるのです。