もくじ
1.不動産管理業務に求められるスキル
まず、不動産管理業務で求められるスキルを3つに分けて紹介します。
1-1.不動産・不動産管理に関する深い知識
最も大切なことは不動産に関する深い知識です。不動産管理業務は、適切な賃料を査定するための市場調査やレポートの作成、管理が決まってからは入居者募集の施策実施や入居希望者の審査、入居者からのクレーム対応・トラブル対応、そして建物や設備の維持管理、必要なタイミングで修繕など幅広いです。
それぞれの業務で専門的な知識やスキルが必要なために、会社では部署ごとで分けられていることが多いですが、不動産管理営業だから入居者のトラブル対応はしなくていいというわけにはいきません。オーナーや入居者にとって「不動産管理会社の人」は不動産管理についてなんでも知っていて当たり前という認識なので、担当外の内容であっても理解しておきましょう。
1-2.プロジェクトマネジメントスキル
不動産管理業務は膨大にあります。その中でも修繕やリフォーム工事の実施ではスケジュール管理が大切です。さらに社内で業務が完了するわけではなく、工事の発注のタイミングや工期の管理、入居者の調整など人の管理も対応しなければなりません。入居者に納得してもらう交渉力と遅延なく工事が終わるプロジェクト管理が必要です。
また入居者募集や退去時の立ち会いなど、様々な業務でも適切なスケジュール管理を行わなければ、オーナーや入居者に不満が残ってしまいます。複数のプロジェクトを同時並行で進められるようなプロジェクトマネジメントスキルが求められます。
1-3.コミュニケーション能力
不動産管理では単純に、建物や設備に不具合がないか、物理的な管理をしていたらいいわけではありません。入居者からクレームがあったときも、どのようなことに不満があるのかを汲み取ったり、不満を抑えてもらったり納得してもらったりするためにも適切なコミュニケーションを取る必要があります。
また物件の管理を任せてくれたオーナーにも空室状況や空室対策への取り組み、メンテナンス状況などを報告して安心してもらうことも大切です。オーナーにとって大きな資産を委託しているわけですから、「この会社に任せてよかった」と思ってもらえるように、コミュニケーションを取って信頼を得るようにしましょう。
2.不動産管理会社の研修内容
業界トップクラスのマンション管理実績を持つ、不動産管理会社の大手である日本ハウズイング株式会社の研修をみてみます。(参考: http://www.housing.co.jp/recruit/education/index.html )
日本ハウズイング株式会社は独立系管理会社として、デベロッパーに左右されない管理ノウハウを蓄積してきました。マンションやビルは建築して終わりではなく、価値を長く維持するための管理が不可欠です。建築が完成したタイミングから、建物は劣化し始めます。そのため、入居者にとっての安全性や快適性を高めるには、徹底した管理を行うことで建物の劣化を防ぐことが必要です。
このように「不動産管理」に特化している会社の研修内容は参考になるでしょう。
日本ハウズイング株式会社はキャリア採用であっても、研修からスタートさせるくらい、研修に力を入れています。研修も階層別研修といって、社員の階級によって分けられた研修と、業務別研修といって各業務での研修、そして資格取得講習などのその他の研修が用意されています。
業種別研修では不動産管理をフロント・事務・管理員の3つに大別し、その業務に特化して着実にスキルアップできるような構成です。また、不動産管理に求められる知識やスキルは多いです。
それらをすべて会社の研修で行うことは現実的に難しいです。そのため、奨励資格を取得すると合格祝金が支給されるような制度を取り入れて、自発的に学ぶ環境を作っています。
3.不動産管理の人材育成サービス
続いて、不動産管理会社ではなく、不動産従事者向けに研修サービスを提供している株式会社RIAコア・ブレインズの研修コースを紹介します。
3-1.賃貸管理初級コース
参:考http://www.ria-corebrains.co.jp/leasing_beginner
不動産管理営業に求められる基礎知識をつけながら、すぐに実務へも応用できることに重点を置いた講座です。まずは不動産業界で働く者として、身につけるべき心構えや、不動産会社と接触するときのお客様心理について理解を深めます。これによって、不動産管理営業として必要な態度を身につけます。
そして入居審査や重要事項説明など実際に契約に至るまでの実務的な内容を学びます。そもそも重要事項説明の意義といったところから条文の解説など、「なぜその行為をするべきなのか。」というところから深い知識を身に着けます。また不動産管理営業として大切な物件調達業務について、マーケット知識や営業ツール、賃料査定報告書の作成手順などを学びます。
そのほか不動産管理では避けられないクレーム対応や基本的な家賃管理と督促のポイント、退去精算時の注意点などです。
これらの講義を通して、たとえ不動産管理の経験がない新卒者や未経験者であっても実務で求められる最低限の知識をつけられるようになっています。
3-2.賃貸管理職コース
研修では管理職コースも用意されています。このコースでは部下のモチベーションを管理するためのコーチング研修など、管理職として求められる知識と能力を身につけられる内容です。
4.基礎から不動産管理業務が学べるおすすめ本
不動産管理業務については、研修以外にも本からでも学ぶことができます。
4-1.賃貸不動産経営管理士 試験対策テキスト
https://www.amazon.co.jp/dp/4863584954
賃貸不動産経営管理の資格を取得するための試験対策テキストです。
賃貸不動産経営管理士は、賃貸アパートやマンションなどの管理のエキスパートです。そのため、専門的な知識と技能、そして高い倫理観が求められます。この資格を取得するためには、管理業務の受託契約を受けるまでのフローから、入居者募集、管理の実務、退去時の対応まで、不動産管理に必要な知識があることが必要です。
その試験に受かるために作られたテキストは、不動産管理業務について学ぶに適しているといえます。資格を提供している協会から公式テキストも出版されていますが、ここで紹介した賃貸不動産経営管理士資格研究会が出版しているテキストの方が、図表が豊富で理解しやすいです。
理解度チェックの問題が適宜掲載されているので、その都度知識の定着度を確認できることもおすすめです。
4-2.平成29年度版マンション管理の知識
https://www.amazon.co.jp/dp/4789238644
986Pと大ボリュームの書籍です。内容はマンション管理に関する法令とプロパティ・マネジメントの実務、管理組合の運営、そして建物や設備の点検などのビルメンテナンス業務まで、不動産管理に一連の内容がまとめられています。
また巻末にはマンションに関する裁判例の要旨もまとめられているため法改正などにも対応した知識を学ぶことができます。オーナーからの相談にも対応できるように読んでおきたい一冊です。
4-3.2016年改正 新しいマンション標準管理規約
https://www.amazon.co.jp/dp/4641137692
2016年3月にマンション標準管理規約は、管理組合の担い手不足、管理費滞納などを原因とした管理不全、災害時における意思決定ルールの明確化などの課題を背景として改正が行われました。今回の改正によって今まで理事および監事は区分所有者に限定されていましたが、外部の専門家も就任が可能になるなど、マンション管理の選択肢を広げたり、そのほか暴力団の排除規定などの社会情勢を踏まえて変更されたりしました。
本は、第1章で改正の全体像を解説しているので、最初に大きな枠で法改正を捉えることができます。そこから第2章で、細かい改正のポイントについて例を交えた解説に続きます。
改正前とも比較しながら内容は進められるので、どのような変化があったか、どのような影響があるかということがわかりやすいです。
5.スキル定着のために資格取得もおすすめ
おすすめの本でも資格取得のための対策テキストを紹介しましたが、スキル定着のためには資格を取ることもおすすめです。そこで不動産管理業務に役立つ資格を3つ紹介します。
5-1.賃貸不動産経営管理士
賃貸不動産管理の専門家であることを証明する資格です。民間資格ではありますが、国土交通省告示「賃貸住宅管理業者登録制度」において、国家資格である宅地建物取引士と同様に重要事項の説明及び書面への記名・押印の役割が認められました。
不動産管理について体系的に、専門的な知識が身につくだけでなく、プロとしてオーナーや入居者との信頼関係を構築しやすくなります。また資格取得社が社内にいることによって、賃貸住宅管理業者の登録事業者として、国土交通省で公表されているので、他の不動産管理会社との差別化要因にもなります。
5-2.マンション管理士
管理組合の運営上のトラブルや工事業者と管理組合とのトラブル、入居者からの相談といった、マンションで生じる様々なトラブルを「入居者」の立場から解決を図る人を表す資格です。トラブル対応だけでなく、建物の長期修繕計画の作成や見直しなどのビルメンテナンス業務の一部も行います。
マンション管理士の資格を取得することで、適切な管理組合の運営や、トラブル時の法令に基づく対象などを身につけることができます。
5-3.管理業務主任者
管理業務主任者は、マンション管理業者が管理組合に対して管理委託契約に関する重要事項の説明や管理事務報告を行うときに必要な資格です。報告を行うときにはもちろん、本人が不動産の管理業務に精通していることが必要です。そのため管理業務主任者の資格を取得しているということは、一連の管理業務について理解している証明になります。
6.不動産の幅広い知識を手に入れよう!
不動産管理業務で必要なスキル、そしてスキルを磨くための研修や本を紹介しました。業務範囲は幅広く、深い知識が必要です。また法改正によって、これまでとは違う対応をしなければならないこともよく起こります。知識については定期的にアップデートしていくことが大切です。
資格取得は知識やスキルの定着にも役立ち、オーナーや入居者に対して信頼の証にもなるので機会があれば、受験してみてください。