賃貸経営においても、やはり「税金」は忌み嫌われる存在になります。
できれば払いたくないもの、手残りを考えると、払うのがバカらしいと苛立ちすら覚えることもあるかもしれません。だからと言って脱税は論外ですが、節税は積極的に考えたいという方が多いと思います。
所得税は、その人が一年間に稼いだ所得金額に対して課せられる税金です。
その所得金額は、次の計算式で算出されます。
必要経費が多くなれば、収入金額が減り、所得金額が減ります。所得金額が減れば自ずと納税する金額も減らすことになることがわかります。
つまりは経費で落とすことができれば所得金額が減り、節税になるわけですから、積極的に経費でおとすことを検討してみたくなります。しかし残念ながら、どんな費用でも経費として認められるわけではありません。
1.不動産管理の経費計算、必要経費であるかが基準です。
まず、経費として認められるか、認められないかの基準はその費用が賃貸経営上、必要な経費であるかどうかで決まります。その費用が必要であるかどうかを税務署に説明し納得させることができるかどうかです。
費用の中には明らかに必要経費として認められるものもありますが、中には判断が微妙な費用もあり、的を得ない説明だと経費として認められないこともあります。
- どんな費用が経費として認められるか
- 判断が微妙な費用を経費とするコツ
この二つは是非知っておきたいところです。
2.不動産管理で文句なしに経費計上できる費用
まず、文句なしに経費として認められる費用にはどんなものがあるかを見てみます。
税金・不動産所得にかかる費用
印紙税や登録免許税、不動産取得税、固定資産税、都市計画税などは文句なしに経費として計上することができます。
管理費(入居付けの為の費用を含む)
管理会社に支払う管理手数料や、清掃費用に代表される建物の管理費用、それから部屋付けのために支払う広告料などは経費として扱う事ができます。
減価償却
物件の取得金額は、減価償却で経費化が可能です。
ただし、土地の取得金額は減価償却対象にはなりません。
※減価償却費の節税効果は非常に高くなります。そんな減価償却費の詳細は別でもお伝えします。
借入の利子
借入そのものの金額である元本の返済自体は経費にはなりませんが、元本に上乗せして支払う利子は経費として認められます。
ちなみに不動産所得が赤字の場合は、土地の取得にかかる借入の利子は、ほかの所得と損益通算ができないということは覚えておいてください。
この4つあたりは賃貸経営において必要経費として明らかに認められる費用だといえます。まず税務署に否認される心配はありません。
3.ちょっと待ったの費用
説明の仕方や提出書類に不備があると、否認されることもありえるので注意が必要な費用です。
旅費交通費
物件までの交通費は基本的に経費として認められます。しかし、例えば、管理会社に委託しているのもかかわらず、物件に赴く回数が多すぎたり、高額すぎたりと不自然なものになると否認されることがあります。例えば領収書などを残しておき、具体的な説明ができるようにしておくのがコツです。
福利厚生
従業員の慰安を目的とした旅行は経費として認めらるものの一つです。しかし、事業主と事業専従者だけの旅行となると、単なる夫婦の旅行、家族旅行とみなされることとなり福利厚生費の経費としては認められません。
自宅兼事務所家賃
通常、事務所の家賃は経費として計上できますが、それが自宅としても使用されている場合には注意が必要になります。どの部分が業務上必要なのかが明確に説明できる必要があります。例えば、自宅と事務所が明確に区分されているなど、どの部分が業務に必要であるかを明確に説明できれば、経費として認められやすくなります。
自動車関連費用
ガソリン代、自動車税、保険料、それから車両そのものも社用車としてであれば、経費として認められます。交通違反の罰則金は経費として認められませんが、業務中のレッカー移動代は経費として扱えます。
研修費
不動産セミナー参加費用、新聞、不動産関連書籍などは経費として計上できますが、業務上必要だからと宅建士などの資格取得セミナーの参加費用や専門学校の費用は認められないので注意してください。
接待交際費
運営上、お世話になっている管理会社の担当者や不動産会社の担当者との飲食代は認められますが、領収書の保管と、「誰といつ」支出したのかの記録を残しておくべきです。
ちなみに法人の資本金額によって交際費の計上の取り決めが違います。
- 資本金一億円超の場合・・・飲食で使った接待交際費の50%が計上できる
- 資本金一億円以下の場合・・・次の①②のいずれかを選択。①上限800万円まで計上②飲食で使った接待交際費の50%を計上。
4、節税金額とキャッシュどちらを重視するか?
もう一度、計算式を見てみます。
確かに経費を多く使えば、所得金額を減らすことができ、課税される金額も小さくなります。しかし、賃貸経営の目的は、課税金額を小さくすることではなく、手元のキャッシュの最大化にあるはずです。節税対策もその為に検討すべきものです。
1000万円の家賃収入がある二人のオーナーの経費の使い方で比べてみます。
Aオーナー | Bオーナー |
---|---|
収入1000万円 | 収入1000万円 |
経費400万円 | 経費600万円 |
所得600万円 | 所得400万円 |
税金約140万円 | 税金約80万円 |
キャッシュ460万円 | キャッシュ320万円 |
税金の支払いは経費を多く使ったBオーナーの方が約60万円安くなります。しかし、Bオーナーの手残りのキャッシュは、Aオーナーと比べ140万円少なくなります。
例えば、Bオーナーが節税効果を上げようと、ムリに経費を使っていたならば、ムダな経費を無理に消費し、支払う税金は小さくはできたものの、結局、大事な手残りのキャッシュは小さくなってしまうという事態を招いてしまいます。
最終的な手元キャッシュをしっかり残そうと思えば、きちんと税金を支払う必要があります。ムダな経費を使うよりも、きちんと税金を払った方が手元にキャッシュは残ります。
文字通り、必要な経費はきちんと計上し、無駄な経費を使わず、きちんと税金を払うこと。これが健全な賃貸経営であるということを理解してください。