もくじ
不動産が贈与されたときの登記申請は実は、専門家に頼らずともご自身でしようと思えば出来ます。
この記事では不動産贈与登記で必要な書類や申請手続きの流れ、専門家に依頼したときの費用の相場についてお伝えしています。不動産贈与登記を専門家に依頼するか自分でするか迷っている方はぜひご覧ください。
1.不動産贈与登記とは
所有権移転登記ともいいます。所有している土地や建物、マンションなどを贈与した場合、その不動産の名義変更を行う必要があります。
本来、贈与は財産を所有する人が無償で相手に譲渡することをいいます。贈与は契約の一種ですが、契約書の作成や登記は必要とされず、当事者間の合意で効力が生ずることが一般的です。
ですが不動産に関しては、単に口約束で済ますのではなく、贈与契約書を作成し、名義変更の手続きをすることになります。この名義変更が、法務局に贈与を原因とする所有権移転登記の申請です。
特に贈与を原因としたものを不動産贈与登記ということもあります。登記によって土地・建物の名義が誰でどのような権利義務が付着しているのかという権利関係や、広さや所在、種類、構造なおどの物理的な状況を記録して公示されるようになります。
1-1.贈与された不動産で登記できる権利
不動産の権利関係というものは、所有権以外にも複数あります。所有権以外に馴染みがあるもので言うと「抵当権」でしょう。
たとえばマンションを購入した時に銀行で住宅ローンを組んで資金を借り入れる場合、銀行は資金を融資する担保として、返済が終了するまで土地と建物に抵当権を設定します。
このとき、不動産贈与登記を済ませていなければ贈与された側は抵当権を設定することができません。
そのほかにも、地上権、地役権、永小作権、賃借権、採石権など不動産を自由に使用して収益化する権利や、先取特権、質権のような借入のときの担保として利用できる権利があります。
不動産を贈与されたらすぐに登記を行うようにしましょう。
1-2.持分を贈与して不動産贈与登記するメリット
また不動産は所有権の全部ではなく、持分を贈与することも可能です。たとえば夫が所有している土地と建物の持分2分の1を妻へ贈与するような場合です。
持分を贈与するメリットは、自宅を売却したときにそれぞれの特別控除を利用できることです。自宅を売却する場合、3,000万円の特別控除が認められています。仮に6,000万円の自宅をそのまま売却すると、控除額の3,000万円を差し引いた金額、3,000万円が課税対象になります。それを夫婦の共有財産として、それぞれが2分の1ずつ所有することにより、最大6,000万円の特別控除が受けられます。
そのため売却したときでも譲渡税を節税することができます。単に贈与するだけでなく、将来の節税のためにも贈与し、不動産贈与登記まで行うことが大切です。
2.不動産贈与の登記で必要な書類
贈与により取得した不動産の登記は、贈与した側と贈与された側が共同で行うことになります。各場合によって必要な書類が異なることもあるので、ここでは一般的な例について紹介します。
実際に登記をするときは司法書士や、贈与された不動産を管轄する法務局に相談してください。
2-1.贈与を証明する書面
贈与は贈与者と受贈者の双方の合意があって成立するもので、それを証明する書面が必要になります。一般的には贈与契約書の原本を添付します。
原本の添付が難しい場合は管轄法務局への報告書の形式で登記原因証明情報となる書面を作成して添付することもあります。
2-2.登記識別情報(土地・建物の登記済証)
贈与する人が贈与する不動産の所有権を取得したときに発行された書類です。法務局から発行されたもので、贈与者の登記申請の意思確認のために添付します。
2-3.贈与をした人の印鑑証明書
登記別情報と同様に、贈与者の登記申請の意思確認のために用いられます。発行後3ヶ月以内のものを添付する必要があります。
2-4.贈与を受けた人の住民票の写し
登記申請する人が実在する人物であるかどうか、正確な住所を証明するために必要な書類です。贈与をした人の印鑑証明書と違って有効期限はありませんが、最新の住所が記載されているできるだけ最近のものを添付しましょう。また、マイナンバーが記載されていないものを提出する必要があります。
所有権移転登記申請書で権利者の欄に住民票コードを記載した場合は、添付情報として住民票の写しの提出を省略できます。
2-5.委任状(代理人が申請する場合)
代理人に登記申請を依頼する場合は委任状を作成して添付します。不動産贈与登記は司法書士のような専門家に依頼することが多いと思います。
記載例は法務省のホームページも掲載されていますが、司法書士の方がすでに持っていることも多いので確認してみてください。
3.不動産登記の申請書について
所有権移転登記申請書は法務局のホームページからも様式と記載例をダウンロードすることができます。
登記申請書に記載する項目は、
- 登記の目的
- 原因
- 権利者
- 義務者
- 添付情報
- 申請日
- 課税価格
- 登録免許税
- 不動産の表示
です。
法務局から様式をダウンロードした場合、登記の目的は最初から記入されています。ご自身で入手された場合は、登記の目的に「所有権移転」と記入してください。
原因では贈与契約が成立した日を記載し、所有権移転の原因として「贈与」と記載します。
続いて権利者・義務者の項目です。法務局の説明を読むと、権利者とは「登記をすることによって登記上直接利益を受ける者」で、義務者は「登記をすることによって登記上直接不利益を受ける者」と書かれています。
難しく書かれていますが、登記権利者が贈与された人、登記義務者が贈与した人です。義務者は登記事項証明書に記録されている内容と一致していなければならないので、ずれがある場合は事前に登記事項証明書を現在のものに変更する登記が必要になります。
添付情報については先ほどの章でお伝えした贈与契約書や登記原因証明情報、登記済証などを添付します。
課税価格・登録免許税については事前に計算した価額を記載します。登録免許税が免除されるような場合は課税価格の記載は不要になります。
ただし登録免許税が免除される場合には免除の根拠となる法令の条項を記載します。減税される場合も同様です。
不動産の表示では登記の申請をする不動産の登記事項証明書に記録されているとおり、正確に記載します。不動産番号を記載した場合には、土地の所在、地番、地目および地積の記載は省略できます。
4.不動産贈与における登記を自分でするときの作業の流れ
不動産贈与登記は専門家に頼まずに自分で行うという選択肢もあります。そのときの作業の流れについて紹介します。
大きな流れ
- 不動産の調査
- 税金の確認
- 必要書類の収集
- 書類の作成
- 贈与契約成立
- 法務局へ申請
不動産の調査ではまず登記事項証明書を取得して現在の情報と相違がいないか確認します。登記事項証明書は法務局の窓口の他にインターネットでも取得することができます。ですが、ご自身で不動産贈与登記を行う場合は相談しながらの方が取得漏れなどを防ぐことができます。
不動産がどこの地区にあっても、近くの法務局で対応してくれるので多少時間はかかりますが、直接法務局に行くことをおすすめします。
登記事項証明書を取得するためには土地であれば「地番」、建物であれば「家屋番号」を調べておく必要があります。地番と住所は異なるので気をつけてください。
地番・家屋番号は固定資産税納税通知書や登記済権利証で確認できますし、法務局で住所から調べることもできるので安心してください。
合わせてここまでお伝えしてきた不動産贈与登記に必要な書類を集めていきます。このときに贈与契約書も作成します。決まった様式はありませんが、最低限必要な記載事項はあるので確認しておきましょう。
インターネット上には贈与契約書のひな形も配布されているので、それを参考に作成されても大丈夫です。そのときも念のため、必要な記載事項は含まれているか確認することが大切です。
そして契約書への署名が完了し、契約が成立すれば法務局へ申請に行きます。不動産贈与登記を申請する法務局はその不動産の所在を管轄している法務局へ申請しなければなりません。
また登記申請では登録免許税の納付も一緒に行います。一般的には収入印紙で納めることになります。収入印紙は法務局や郵便局で購入できるので事前に申請書に記載した登録免許税の価格分、購入しておくとスムーズに手続きを進められます。
これで不動産贈与登記は完了です。
5.専門家に不動産贈与登記を依頼したときの費用
ご自身で不動産贈与登記をした場合の流れをお伝えしましたが、書類の収集や作成は思ったより労力がかかります。また登記申請によっては内容が複雑なものもあり、時間もかかることが多いです。
そのため実際は、司法書士や土地家屋調査士などの資格代理人に申請手続きを依頼される方が多いです。そこで不動産贈与登記を専門家に依頼したときの費用についてお伝えします。
どの専門家に依頼するかによって支払う報酬はピンきりですが、贈与契約書やその他の必要書類の作成など全て含めても5万円から高くても10万円以内に収まることがほとんどです。
依頼の前に見積りを出してくれるところもあるので、急がないのであればいくつかの事務所に見積りを依頼して、最も信頼できて、価格が妥当なところに依頼することがおすすめです。
価格だけで決めてしまうと後から余計な費用や手間がかかるなど後悔することになるので、事前に勉強はして、仕事内容も含めて納得できるところを選びましょう。
6.まとめ
不動産贈与登記で必要な書類や、自分で登記申請する場合の作業の流れ、専門家に依頼したときの費用の相場についてなど、不動産贈与登記に関する全般的なことをお伝えしました。
不動産贈与登記はこの記事でお伝えしたようにご自身でも申請できますが、慣れない状態での手間と時間、不備があったときのリスクを合わせて考えると、多少お金は払ってでも専門家に依頼したほうが安心です。
ただ専門家に言われるが手続きを進めてしまうと損をする可能性もありますから、事前に不動産贈与登記やそれにかかる費用、税金について調べたうえで依頼するようにしましょう。