不動産を相続したとしても、何かの理由で相続放棄することを希望するかもしれません。しかし相続放棄は簡単ではなく、家庭裁判所で手続きをして初めて成立します。
複雑そうに思えますが、実際には専門家でなくても手続きを進めることができ、費用も少額です。
この記事では相続放棄の手順や、気を付けるべき点をご紹介します。
相続放棄すると不動産の放棄を意味する
相続放棄というのは、被相続人の負債を負わないで良くなるものです。しかしプラスとなる財産の相続権も失うことになります。
負債額が不明な場合には「限定承認」という方法でプラスの財産の範囲内で負債を返すという条件のもと、相続を承認する制度を利用できます。負債が財産よりも多い場合には、差額を返済する必要がなくなるのです。
また、財産の方が多いことが判明した場合には財産と負債の差額を相続できます。
負債になるのか、プラスになるのは分からないときに限定負債を申請することもあります。しかし、司法書士への依頼費用が高額になるケースもあることから、限定承認を行うことはほとんどありません。
不動産を相続放棄する手順
相続放棄は一般の方でも行うことができます。続いては、相続放棄の手順を見ていきましょう。
1:書類を集める
まずは必要書類を集めていきます。
- 収入印紙(800円)
- 家庭裁判所からの返信封筒用の切手(400円程度)
- 相続を放棄する人の戸籍謄本
- 相続を放棄する人の身分証明書の写し(運転免許証、健康保険証など)
- 被相続人の除籍謄本(死亡を記載した戸籍謄本)
- 相続放棄の申述書
- 証明書発行手数料(1通につき150円の収入印紙)
収入印紙は家庭裁判所で発行します。費用は異なるので、家庭裁判所で確認しておきましょう。
申述書は家庭裁判所で手に入れるか、裁判所のホームページからもダウンロードできます。
2:家庭裁判所に提出
申述書に必要事項を記載し、必要書類と共に家庭裁判所に提出します。
被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に提出します。
3:家庭裁判所からの質問に回答
家庭裁判所から質問が記載されている「照会書」が届くので、相続放棄の理由など必要な部分に回答していきましょう。
4:相続放棄の完了
照会書の内容が家庭裁判所によって確認され、問題がないとなると相続放棄申述書受理通知が送られてきます。
この書類が届くことで、相続放棄が完了します。相続放棄の後にしなければいけいないことが相続財産管理人の選出です。
5:相続財産管理人の選出
不動産を相続放棄すると所有権はなくなるのですが、民法第940条では「次の管理者が決まるまで不動産の管理義務を負う」ことが定められています。
そこで、家庭裁判所に相続管理人を選任してもらい管理義務から逃れる必要があるのです。
相続財産管理人は、相続人がいないか相続放棄された遺産管理を行うように家庭裁判所から選任された人のことです。主に、地域の司法書士や弁護士が選任されます。
不動産の相続放棄に関する注意点
相続放棄は撤回できない
基本的に相続放棄は撤回することができません。例えば、相続放棄してから高価な遺産や不動産があると判明しても、撤回できないのです。
しかし、
・未成年が勝手に相続放棄手続きをした場合
・痴呆や精神障害を持っている相続人が相続放棄した場合
には、例外として相続放棄が撤回できます。
相続放棄の申請期間の延長
また、相続放棄の期間を延長できることも覚えておきましょう。
相続放棄の手続きは、被相続人が亡くなってから3か月以内に行われる必要があります。しかし、相続放棄手続きを終わらせるには、3か月では足りないことがあるのです。
そのような場合には、家庭裁判所で相続放棄の期間延長を申請し、3か月の猶予期間を設けてもらうことができます。
固定資産税を払わない手続き
被相続人の債権者が代位登記して、知らない間に相続人に所有権が移っていることもあります。
この場合に、固定資産税を支払う必要が出てくるので、固定資産税の賦課期日の1月1日までに登記簿上の名義を取り消すことができます。
相続放棄の手続きをスムーズに進めよう
相続放棄をする際は、期日があることや抹消登録など覚えておくべきポイントがいくつかあります。また、管理責任は相続人に残っていることから、相続財産管理人を定める必要があります。
手続き自体は難しくありませんが、これらの点を覚えておけばスムーズに相続放棄の手続きができるでしょう。