1.こんな管理会社の対応。あなたならどうする?
管理会社に委託をしたけれど、満足ゆく対応をしてもらったという人は意外に多いようです。
ここでは、事例の一部をご紹介します。
①所有者の娘が相談しても話に応じない管理会社
ずさんな管理状態を解決しようと所有者の娘が提案しても、管理会社が取り合わなかったケースです。
遠方の木造アパートを地元の管理会社から購入、20年来、購入した管理会社へ委託していました。
近年、所有者が高齢になったため、娘が実務を引き継いでいました。
3、4年物件の空室率が高いが、管理会社からも何の提案もなく、報告もない状況が続いていため、娘から連絡を取り、家賃を下げる、リフォームするなどの提案をしました。
実行されていないので、現地確認すると、原状回復はされていない、外観は錆や破損がある、内壁なども配管補修の際の穴が埋められていない。
管理会社は、所有者である母親と話はするが、娘とは話をしないし、管理から手を引くという回答でした。
②管理会社の対応が遅く、繁忙期を逃してしまった
転勤をきっかけに定期借家で賃貸募集を始めましたが、管理委託契約締結後2か月間、ホームページに掲載されなかったので、繁忙期を逃してしまい、空室になったというケースです。
・10月 管理会社を決定、引っ越し、契約書を催促したがもらえなかった。
・11月下旬 契約書締結。募集開始。
・12月上旬 室内の写真、物件の重要事項説明書のコピーを管理会社に送付。
・1月下旬 大家さんが管理会社のホームページやポータルサイトに物件が掲載されていないことに気づき、管理会社へ連絡。
・2月中旬 見学などの状況を知らせてほしいというメールを大家さんが管理会社へ送る。
問い合わせ、案内ともに無いとの回答だった。
・2月中旬 業者間サイトに掲載がないため掲載を大家さんから管理会社へ依頼。賃料の値下げ、敷金礼金を下げて掲載するよう依頼。掲載したと、翌日回答があった。
③途中から管理の内容を変更されてしまった。
ビルを購入した不動産会社に管理委託を任せました。
水道の検針、入居者募集、退去、退去時の見積と修繕、住人からの連絡受付などの内容で報酬額も決めてありました。
7年ほど経ったときに「こんな安いパーセンテージでは水道検診や管理はできないし、クレーム対応もしません」と言われてしまった。
2.解約は契約期間中でも可能
上記のような状態で、優先すべきことは、できる限り早く空室を稼動させることです。
契約とは信頼関係で成り立つものですが、すべてのケースにおいて管理会社との関係で信頼できないと感じています。
それならば、管理会社を変更して他社へ依頼すべきでしょう。
現在の管理会社とは契約解除をした上で他の信頼できる管理会社に委託しましょう。
①管理会社は契約期間中でも解除ができる
管理会社との契約は、2年の契約期間が終わるまで解約を待たなければならないと思われている大家さんはいませんか。
期間は2年、その後は自動更新というような形にしている管理会社が多いようですが、2年の契約期間が終わるまで解約を待たなければならないわけではありません。
実際は契約期間中であっても管理会社との契約を解除することは可能です。
契約書に書いてある、解約に関する内容を確認して、記載されている条件に沿って手続きを行い解約します。
契約書によっては契約期間についても、契約期間中の解約についても何も書かれていないものがありますが、解約は可能です。
民法第651条の第1項に「委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。」という条文もあります。
条文には「当事者の一方が相手方に不利な時期に委任の解除をしたときは、その当事者の一方は、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。」ともあり、管理会社が賠償請求をしてくる可能性があります。
しかし、上記のように管理会社側に非があるケースならば「善管注意義務を果たさなかった」という理由で賠償しなくてもよいと解釈される場合が多いです。
弁護士などの専門家に相談してみましょう。
3.解約のパターンは3つ
法律的みると、管理会社との契約解除は3種類あります。
現実的に一番行われるのは「約定解除」です。
①合意解除
管理会社とオーナー様双方の意思表示によって契約を解除するもので、同じタイミングで解約の意思を持ったという解釈になります。
現実的には合意解除となることはほとんどなく、次に説明する「約定解除」が大半を占めます。
②約定解除
契約に基づき一方的な意思表示で契約解除を行うものです。
双方の同意が必要ありません。国土交通省が作成した「賃貸住宅標準管理委託契約書」に沿った契約書ならば、「その相手方に対して、少なくとも 3 カ月前に文書により解約の申入れを行うことにより、この契約を終了させることができます(第20条)」と記載されています。
これは、管理会社が解約を認めないといっても解約できることを示唆しています。
③法定解除
管理会社から賃料の入金がないなど、賃貸住宅管理業においてあってはならない行為をした場合、債務不履行となり一方的な意思表示によって「法定解除」が行えます。
しかし「法定解除」をするには、「契約に定める義務の履行を相当の期間を定めて催促する」ために、事実上行使することはほとんどありません。
それでも本当に問題ないのか心配ということであれば弁護士に相談してみてください。
契約解除事由は、管理会社がと思います。
その中でお客様が不利益をこうむった分(本来ならば稼動していただろう空室損など)を請求なさってはいかがでしょうか。
いずれにしましてもまずは空室稼動を最優先にすべきでしょう。
4.管理会社解約後は入居者への通知を忘れずに
解約の際は文書により申入れを行うと、契約書に定められていることが大半です。
どのような順序で行い文書はどんな内容にすればよいのでしょうか。
①解約通知の内容は?
解約の申入れでは「いつ締結した、どの契約を解除するか」「契約書の第何条に基づいた契約解除なのか」「いつをもって契約解除するか」を盛り込んだ解約書を作成する必要があります。
管理会社を解約して別の管理会社に委託契約を変更する場合は、別途引き継ぎの手続が必要になります。
管理業務の引き継ぎは管理会社間でやってもらいましょう。
その際に、入居者に不安を与えないように丁寧に通知を行う必要があります。
管理会社に任せたままいにせず、大家さんがしっかりと確認することが大切です。
②入居者への通知は忘れないようにする
特に家賃の入金管理・督促を管理会社に委託していた場合、振込先が以前の管理会社となっていることがほとんどです。
入居者が今までの管理会社に家賃を振りこまないように、管理会社変更の連絡は忘れずにしましょう。
ポストに案内を入れるだけではなく、マンションの掲示板に掲示し、場合によっては直接訪問して説明しましょう。
入金し直してもらうと入金サイクルが乱れてしまいます。
ローンの支払いにも影響する恐れがあるので、管理が変更になったことを入居者が周知しているか確認する必要があります。
5.まとめ
不動産の管理は大家さんと管理会社、入居者の信頼関係があって、うまくゆくもので、空室率も低くなるものです。
もし、大家さんが「管理会社が何もしない」不信感を抱いてしまったら、管理会社の変更を検討したほうがよいかもしれません。
契約書に則り解約を行い、入居者に不安を抱かせないよう通知して入金が滞らないようにしましょう。