不動産の贈与では贈与契約書が必要で、契約書はご自身でも作成できます。ただ記載不備があると税務署に否認されることもあるので注意が必要です。
そこで契約書作成時の注意点や持分を贈与されたときの契約書の作り方について、ひな形つきで紹介します。贈与契約書をご自身で作成しようと考えている方はぜひご覧下さい。
また贈与契約書についてのお問い合わせも受付しておりますので、個別相談は以下よりお問い合わせくださいませ。
1.不動産贈与契約書の作り方
不動産贈与契約書に決まった書式はありません。最低限必要な記載項目さえあれば、どのような形式で書いても大丈夫です。パソコンでも手書きでもどちらでも好きな方で作成できます。
贈与契約書の作成は専門家に依頼してもいいです。贈与契約書の作成だけなら1万円~2万円程度、そこから不動産贈与登記までまとめて依頼しても5万円~10万円程度です。
ご自身で契約書を作る自信がない場合や、契約書作成や登記の手間が面倒な場合は依頼してしまった方がいいでしょう。
ただ専門家に依頼したとしても不動産贈与契約書に必要な項目や注意点は知っていた方がいいです。それでは1つずつお伝えしていきます。
2.不動産贈与契約書を作るときの注意点
贈与契約書の作成の際には、以下の点をしっかりと確認していきましょう。贈与契約書に不備があれば税務署に否認される可能性もあります。
贈与が否認されるとそれはまだ贈与者の財産とみなされます。もし贈与者が亡くなってしまった場合は相続財産として相続税の課税金額にも含まれることになるので気をつけて作成しましょう。
とはいえ、あまり難しいものではなりです。下記の点に注意していればまず贈与契約書の不備で税務署から贈与を否認されることはありません。
2-1.いつ、誰に、何を贈与したか
贈与を行った日付、誰から誰へ贈与したのか、贈与したものを明確に記載します。特に不動産贈与で記載する不動産情報は住所ではなく所在・地番となります。
所在・地番を住所と同じものだと思って確認せずに記載すると正しい不動産情報ではないこともあるのでこの点は入念に確認しましょう。
2-2.贈与の条件、贈与する方法
所有権移転登記に必要な費用は誰が負担するのか、どのような方法で贈与するのか、不動産にかかる税金(公租公課)の扱いはどのようにするかということを記載しておきます。
2-3.贈与者と受贈者の住所・氏名・印鑑
贈与契約書ではその契約の当事者となる贈与者と受贈者の住所・氏名・印鑑を忘れずに記載します。
贈与契約書はパソコンで作成することも可能ですが、氏名のところについては手間かもしれないですが自筆で、印鑑も実印にした方が安全です。もちろん忘れなければ氏名はパソコンでの入力、印鑑は認印でも問題ありません。
ただし贈与者の印鑑は実印です。契約書で認印が認められているのは受贈者、贈与を受ける人だけなので注意してください。
2-4.受贈者と受贈者の親権者名を併記
贈与する相手が未成年のときに限りますが、そのときは受贈者の氏名のほかに、親権者の氏名も合わせて書く必要があります。
2-5.収入印紙200円
現金や株式の贈与とは異なり、不動産の契約書には収入印紙が必要になります。金額は一律200円となっているので、忘れずに貼りましょう。
2-6.確定日付
これは必須ではありません。ただ万が一、税務署から贈与契約書を過去に遡って作成したと疑われたときのために、公証役場で「確定日付」をもらっておくと公式な証明とすることができます。
3.不動産贈与の契約書のひな形
1つ不動産贈与契約書のひな形をお伝えすれば下記のようなものになります。
贈与契約書
贈与者山田太郎を甲、受贈者山田次郎乙として、甲乙間において次の通り贈与契約を締結した。
(贈与の目的)
第1条 甲は、甲の所有する下記記載の財産(以下「本件財産」という)を乙に贈与し、乙はこれを受諾した。
(1) 宅地
所在 大阪府大阪市北区紅梅町○ 丁目
地番 △ 番 □
地目 宅地
地積 123.45 平方メートル
(2) 建物
所在 大阪府大阪市北区紅梅町○丁目
家屋番号 △ 番 □ 号
種類 居宅
構造 木造瓦葺平屋建て
床面積 80.11 平方メートル
(移転登記等)
第2条1 甲は乙に対して、平成〇〇年〇〇月〇〇日限り、本件財産を乙に引渡し所有権移転登記手続きを行うものとする。
2 土地・建物につき、甲は乙に対して、現状有姿の状態で引き渡すとともに、担保権その他の権利の制約のないことを確約する。
3 土地・建物の所有権移転登記手続きに必要な一切の費用は、乙が負担する。
(公租公課の負担)
第3条 土地・建物に課税される公租公課については所有権移転登記までは甲
が負担し、所有権移転登記以後は乙が負担する。
上記の通り契約が成立したので、本書面を2通作成し、甲乙各1通を所持する
ものとする。
平成 ○○年〇○月○〇日
贈与者 (住所)大阪府大阪市北区紅梅町○丁目△番地□号
(氏名) 山田太郎 印
受贈者 (住所)大阪府大阪市北区紅梅町△丁目□番地○号
(氏名) 山田次郎 印
-------不動産贈与契約書ひな形 ここまで-----
4.不動産贈与契約書に収入印紙は必要?
贈与対象が不動産の場合、200円の収入印紙が必要になります。一般的には200円で済みますが、契約書の記載方法によっては印紙の金額が増える可能性があるので注意が必要です。
それは不動産贈与と合わせて契約金額を書いた場合です。不動産の譲渡契約書は印紙税の課税対象となっており、印紙税は契約書に書かれている契約金額で決まるからです。
本来贈与は無償で行われるため別途契約金が発生することはないと思いますが、もしあれば200円とはならないので気をつけましょう。
また贈与契約書に土地の評価額が記載されていても、その評価額は不動産譲渡の対価としての金額ではないので、記載金額にはあたらないので安心してください。
5.不動産の持分を贈与するときの契約書の書き方
不動産の持分を贈与するからといって、契約書の書き方が大きく変わるわけではありません。持分のうちどれくらいの割合を贈与するのかを示す形になります。
不動産贈与契約書
贈与者山田太郎と受贈者山田次郎との間で、次のとおり贈与契約を締結した。
第壱条 贈与者は,その所有する下記の不動産の共有持分4分の3のうち持分4分の1を受贈者に贈与することを約し、受贈者はこれを承諾した。
記
所 在 大阪府泉佐野市羽倉崎
地 番 ○○番○
地 目 宅地
地 積 123.45㎡
第弐条 贈与者は、受贈者に対し、本日付贈与契約書を原因とする所有権移転登記をする。また、受贈者が、本日付贈与契約を登記原因とする所有権移転登記の申請をすることも承諾する。
第参条 本件贈与契約に係る費用は、贈与者と受贈者が折半して負担し、前条の所有権移転登記手続きに必要な費用は、受贈者の負担とする。
以上契約の成立を証するため、本書2通を作成し、署名捺印のうえ各自1通を保有する。
平成 ○○ 年 ○○月 ○○ 日
泉佐野市羽倉崎○○丁目○○番○○号
贈与者 山 田 太 郎 印
泉佐野市羽倉崎○○丁目○○番○○号
受贈者 山 田 次 郎 印
-------契約書ひな形 ここまで-----
不動産の持分を贈与されるときも登記は必要になるので、贈与契約を結んだあとは忘れずに所有権移転登記まで行います。
6.まとめ
不動産贈与契約書の作成の仕方から注意点までお伝えしました。「契約書」といっても、贈与契約書はそこまで難しいものではありません。書式も決まっていないので、最低限必要な項目だけ忘れないようにすればご自身でも作成できてしまいます。
ただ専門家に依頼したほうが安心というのもまた事実です。不動産の贈与は契約書だけでなく、その後の不動産贈与登記まで必要になります。贈与契約書の作成よりも、登記の方が手間や時間がかかります。
司法書士事務所によっては契約書の作成から登記までひとまとめに依頼を受けてくれるところがあるので、料金を抑えながら楽に不動産贈与で必要な手続きを終わらせることもできます。
不動産贈与登記については別の記事でお伝えしていますので合わせてご覧いただき、専門家に依頼するかご自身で全てやられるかを決める参考にしてください。